新型コロナの影響で米国の「ブラックフライデー」が長期化、「ブラックノーベンバー」に

今年はホリデー商戦が長期化

これらの事象や、オンラインショッピングに移行するトラフィックの可能性に対応するため、多くの大手チェーンでは、今年はブラックフライデーをブラックノーベンバー(11月)に変更しました。場合によっては、ブラックフオクトーバー(10月)とブラックディッセンバー(12月)を実施している店もあります。

一部の人々は例年、ブラックフライデーの費用対効果の高い情報を利用するため、特定の時間に異なる店舗をハシゴしてクリスマスショッピングを行っていますが、今年は長期間に渡ったため、消費者がお金を節約する時間がたっぷりあったのです。

11月1日から「ブラックノーベンバー」としてセールを実施した企業。

この戦略を採用している大手リテールとしては、「Walmart(ウォルマート)」、アメリカ最大の家電量販店「Best Buy(ベスト・バイ)」、アメリカミレニアム世代に最も人気な、大手スーパーマーケット「Target(ターゲット)」などがあげられます。

Walmartでは、ブラックフライデーの週末を1回だけにするのではなく、3回の週末に渡ってお得な情報を提供することにしました。このキャンペーンは、“Black Friday Deals for Days(ブラックフライデーのお得期間)”と呼ばれ、11月の第一、第二、第四週末に行われます。週末に登場するお得な情報は、前週の水曜日に発表されました。

また、Walmartは、店頭での買い物ではなく、カーブスサイドピックアップ(店舗脇に車を停めて購入した商品を受け取り、店舗には入らない)を選択することで、人々に安全なショッピングを促しています。例年のグリーティング担当者(店頭に立って呼び込みをするスタッフ)も、現在はマスク・ポリシーを守り、店頭での買い物客に、ソーシャルディスタンスを呼びかけています。

Best Buyは、10月からブラックフライデーのお買い得情報を提供しています。Best Buyの担当者は声明の中で、「今年のブラックフライデーは1日のみではなく、数カ月に渡って開催されています」と述べています。

お買い得品の中には、店頭での販売が始まる前に、まずオンラインで先行販売されるものもあります。特定の日には、買い物客はBest Buyのウェブサイト上で早い時期に掲載される広告からさらにお得な情報を得ることができます。

また、ブラックフライデー当日には、Best Buyのリアル店舗は午前5時にオープン。感染リスクを軽減するために、やはりカーブサイド・ピックアップサービス(駐車場やショップ前の路肩で購入した商品をピックアップする)を利用することを奨励しています。

Targetも、11月1日から11月全体を対象としたブラックフライデーのお得な情報を提供してきました。提供されるお得な情報のほとんどは、一度に1週間分の情報となっており、毎週木曜日にターゲット広告を通じて発表され、そのお得情報は日曜日まで有効になります。さらに、同社は11月1日から12月24日までの間に購入された商品については、購入後2週間まで最安値保証の対象期間を延長しています。

TargetのBlack Friday, Cyber Monday。

もちろん、他の多くの小売業者と同様に、Targetもカーブサイド・ピックアップサービスを提供しており、モバイルアプリでローカルの小売店と顧客間の配送を行うShipt(シプト)のようなサービスを利用して商品を発送することで、場所によっては最短1時間で商品を受け取ることができます。

店頭での購入も非接触型になりつつあります。Targetは店内での支払い方法を確立し、顧客が支払いをする番になるとテキストが送られてきて支払いができる、「ライン予約システム」というものも準備しています。Targetはまた、レジではなく、レジを通さずに支払うことができる新しいデバイスを店内に設置しました。

オンタイムでのギフト配送には課題も

2020年の電子商取引は、配送会社が5年後に到達を計画していた成長に到達する勢いです。しかし、残念ながら現在のインフラと配送システムは、このホリディシーズンの配送数をタイムリーに処理することができない可能性があり、出荷が遅れることが予想されています。時間通りに配送される保証はされておらず、オンタイムでのギフト配送を希望する人々にとっては心配の種になっています。

2020年という前代未聞の社会混乱の中、小売業者は混沌と不確実性を抑えるために全力を尽くしています。リアル店舗での騒動が少なく、「Black November」に移行した今年のサンクスギビング・ショッピングは、11月30日にオンラインショッピングの頂点とも言えるCyber Monday(サイバーマンデー)を迎えました。

今年はこのCyber Monday参加企業がブラックフライデーを最大のセール日にしたのも特徴でした。将来的には“サイバーフライデー”がブラックフライデーに取って代わることになるかもしれません。

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結城彩子 Ys and Partners(COO/ブランドストラテジスト)
結城彩子 Ys and Partners(COO/ブランドストラテジスト)

30年を超える日米両国でのブランドマーケティングの経験を持つストラテジスト。
グローバルエージェンシーのJWTにて、ユニリーバのLUXブランドの立ち上げ、De Beersダイヤモンドの日本市場での成功に寄与。
1999年に渡米、2002年に米国法人 Ys and Partnersを共同創業。2005年にワイズアンドパートナーズ・ジャパンを立ち上げ、LA+東京+横浜の3拠点から、日本国内はもとより日本から北米に展開するジャパンブランドのマーケティングを支援している。
ブランド戦略構築からクリエイティブ、デジタルマーケティング、販路開拓コンサルティングまで、統合型マーケティングコミュニケーションの専門家チームを率いる。
LAを拠点に、日米のオフィスを往復しながら、その傍らで大学・行政機関などの依頼で講演や執筆を続ける。ICU卒業。TESL認定教師、アメリカンマーケティング協会/OCPRSA/JASSC会員として活動中。

結城彩子 Ys and Partners(COO/ブランドストラテジスト)

30年を超える日米両国でのブランドマーケティングの経験を持つストラテジスト。
グローバルエージェンシーのJWTにて、ユニリーバのLUXブランドの立ち上げ、De Beersダイヤモンドの日本市場での成功に寄与。
1999年に渡米、2002年に米国法人 Ys and Partnersを共同創業。2005年にワイズアンドパートナーズ・ジャパンを立ち上げ、LA+東京+横浜の3拠点から、日本国内はもとより日本から北米に展開するジャパンブランドのマーケティングを支援している。
ブランド戦略構築からクリエイティブ、デジタルマーケティング、販路開拓コンサルティングまで、統合型マーケティングコミュニケーションの専門家チームを率いる。
LAを拠点に、日米のオフィスを往復しながら、その傍らで大学・行政機関などの依頼で講演や執筆を続ける。ICU卒業。TESL認定教師、アメリカンマーケティング協会/OCPRSA/JASSC会員として活動中。

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