新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、生活様式の変化はメディア接触行動にも及んでいる。ここでは、2020年に発表された調査データをもとに、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌市場について分析する。
ステイホームでテレビ接触頻度が増
まず、日本新聞協会が2020年8月6日に発表した調査「新型コロナウイルスとメディア接触・信頼度調査」(調査期間:5月26日〜27日、対象:15歳〜79歳の男女、有効回答数:1243)によると、コロナ禍でのマスメディアへの接触頻度が増加していることが分かる。メディアへの接触が「増えた」「やや増えた」の回答の割合は、テレビが58・3%、新聞が40・4%(有料電子版53・1%、無料電子版48・9%、ウェブサイト56・3%)、ラジオ29・3%、雑誌19・3%、となっている(図1)。
また、テレビに関してはビデオリサーチが5月22日に発表したテレビ視聴率調査(調査期間:2020年4月1日〜30日、調査エリア:関東地区)でも、コロナ禍では昨年同期に比べて12〜18時の時間帯でのテレビ視聴が6ポイント以上増加していることが分かっている。ラジオについても、同社の調査(調査期間:2月3日〜5月31日、対象:12歳〜69歳の男女)で、首都圏民放5局トータルの週別の平均聴取人数は2月から増加し始め、4月20日週には約90万人とピークに達し、5月11日週以降も86万人以上と高水準を維持していることが分かった。
雑誌については、全国出版協会・出版科学研究所が発表した2020年上半期の雑誌の推定販売金額が、紙・電子出版合わせて2727億円(昨年同期2818億円)と微減。その内訳は紙が2667億円(前年同期比97・1%)、電子版が60億円(同82・2%)だった。なお、書籍も含めた出版市場全体では、ステイホームの影響もあり2・6%増の7945億円規模に拡大。特に電子出版が28・4%伸び、占有率は22・2%に達した。
新聞広告の注目度も上昇
では、接触が大幅に増えたテレビや新聞において、消費者の広告に関する意識は変化しているのだろうか。先の日本新聞協会の調査には、新聞広告に対する意識を「2020年1月〜3月末まで」と緊急事態宣言が発令された「4月以降」とで比較したデータがある。これよると、4月以降は「より注目するようになった」「より関心をもって見るようになった」との回答が10ポイント以上高まり、5割近くの人が注目度や関心度が上がったと回答している。
テレビ広告に関しては、日本民間放送連盟研究所が8月4日に発表した報告「テレビの広告効果に関する研究」(調査期間:3月19日〜30日、対象:15歳〜69歳までの男女、有効回答数:2536)の中で、その効果が検証されている。この調査によると、テレビがほかの媒体(新聞、ラジオ、インターネット、SNSなど)を抑えてトップとなった項目は「認知の契機」だけでなく、「興味関心」「情報検索の契機」「欲求・利用意向の契機」「印象・記憶に残る」の4つだった。
コロナ禍により、企業が消費者と接点をつくりづらい状況が生まれている。生活様式が変わり、消費者のマスメディアへの接触頻度が増加する傾向は、広告メディアの価値を改めて見直す好機になりそうだ。