「CES2021」はオンライン発信の見本市だ P&G、Samsungのプレゼンをレポート(森 直樹)

P&Gの新たな試み「バーチャル・ライフ・ラボ」とは?

CESへの本格進出から3年目を迎えたP&Gは、展示会場をオンライン上に模したバーチャル体験スペースを公開。会員登録して、自身のアバターを設定すれば、P&Gが用意したオンライン上のバーチャル会場をアバターで巡ることができる。

このアバターにはコミュニケーション機能が備わっており、チャットでの質問のみならず、ボイスチャット機能でP&Gの社員と思われるアバターから説明を受けたり、対話ができるようになっていた。バーチャル空間でも双方向のコミュニケーションが実現しているのが非常に新鮮であった。

ちなみに、筆者も自身のアバターを作成してボイスチャットによるサポートを受けながら、バーチャル空間を巡ってみた。VRの映像品質は、まだ過渡期という印象を持ってしまったが、アバターとなって双方向コミュニケーションをボイスチャットしながら得つつ、P&Gの世界を巡る体験はとても新鮮であった。

P&Gが開設した、CES期間中の特設サイト。
会員登録すると参加することができるバーチャル・ライフ・ラボの様子。

P&GがCESで発信した、広告・メディアプランニングへの考えとは?

P&Gは今年もプレスカンファレンスの他、複数のセションに参加して発信も行っていた。

個別セッションでは、P&G Chief Brand OfficerのMarc Pritchard氏がモデレーターを努め、パンデミック、経済不況、人種差別、気候変動の4つの世界が直面する問題を提示。問題を解決するイノベーションが市場成長につながり、この結果としてイノベーションと価値創出という成長の好循環が期待できると主張。昨年のCESで掲げた「CONSTRUCTIVE DISRUPTION(建設的な破壊)」による消費者の体験の再発明に取り組んでいるとした。

もうひとつ、マーケターにとってP&GによるCESでの発信は注目するべき点があった。それは、同社のメディアやコミュニケーションに関する考えの発信だ。今年の個別セッションでは、消費者に好まれるメディア体験、より正確なマスリーチの達成、デジタルメディアが抱えるビューアビリティや詐欺に関わる問題について、メディアの再発明によるブランドの再構築の取り組みについて発信をしていた。

具体的には、Cookieの利用規制に対する解決策として、独自のプラットフォームによるパーミッション取得を前提にした消費者データの収集、データを活用したエンゲージメントの構築についてプレゼンテーションがあった。中国では、メディア支出の9割がデジタルであり、そのうち8割以上がプログラマティック広告であること。次に注目しているのは、コネクテッドTVでのメディアの未来であることなどが話された。

その他、米国において現在、深刻さを増している問題である人種に関わる不公平性が是正されていない点について、広告会社や制作会社と連携して、平等な表現を達成するために、ジェンダー・人種や民族の米国における人口の割合を考慮したメディア表現へのアクセスに向けた行動を起こしているとのことだった。

P&G Chief Brand Officer Marc Pritchard氏によるプレゼンテーション。世界を取り巻く4つの課題を提示し、解決に向けたイノベーションの必要性を説いた。

Marc Pritchard氏は、広告・メディア活用についての考えも発信した。

電通
CDC ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
エクスペリエンスデザイン1部長/クリエーティブディレクター
森直樹氏

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。

 

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