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今必要なのはフレキシビリティ(柔軟性)
今回のオールデジタルのCESの運営を支えるマイクロソフトのCEO サティラ・ナデラ氏は、「今私たちが必要とするのは、フレキシビリティ(柔軟性)だ」と言います。コロナパンデミックの状況下でどう人々とコラボレーションするか、どう学校教育を進めるのか、どう健康を確かなものにするか。そういったことに柔軟に取り組んでいく必要があるということです。オールデジタル開催のCES2021も、そのフレキシビリティのひとつの表れだと言えます。
フレキシビリティが必要なのはパンデミックに対してだけではありません。
私たちはパンデミック以外にも経済の低迷、人種問題、気候問題など他の問題を抱えています。こうした様々な課題に直面する中、どう柔軟に対応していくのか。そのひとつの答えとして、P&Gのチーフブランドオフィサーであるマーク・プリチャード氏は、Teamsによるプレゼンテーション(イベント終了後までオンデマンド再放送はなし)において、「ディスラプションに対して自分たちがリードする側に立つことで乗り越えていく」と話しました。
P&Gは4つの「正しいアクション」で成長
具体的にどうリードしていくかという点において、マーク氏は4つのリインベント(=再発明)を紹介しました。イノベーションの再発明、メディアの再発明、広告の再発明、そして(ブランドとしての)市民権の再発明です。イノベーションの再発明に関しては、昨年執筆した「CES2020」の記事を参照いただくのがよいかと思いますのでここでは割愛します。
「メディアの再発明」は、自分たちが主導権を握る取り組みです。マーク氏は、消費者の同意を得てファーストパーティデータを築くこと、今よりも多くメディアの仕事をインハウスで手掛けること、そしてプログラマティックのメディア購買をより進めること、と説明しました。
「広告の再発明」は、生活者にとってUsefulであり、Helpになる情報を届けることです。清潔であるということを世の中に提供するプロとして、生活者が必要とする情報をしっかりと届けます。
最後に、「市民権の再発明」はFor Goodとなるコンテンツプロセスを経ることです。マーク氏は、「誰かを阻害する、偏見を無意識に社会に浸透させてしまうようなコンテンツは手掛けない」と言います。そのためにマーケター→エージェンシー→プロダクション→メディアという一連のクリエイティブ&メディアのサプライチェーンにおいて差別のない平等性を体現することを誓いました。
具体的にはこの一連のフローにかかわる全スタッフの性別の比率を1:1に、人種はアメリカの人口データの比率に合わせて構成します。また制作過程においても、監督の世界は有色人種が少ないため、有色人種の、さらに女性の活躍を後押ししています。また、撮影した制作物の確認は全人種のレンズを通して行い、広告物の投下対象として一般的には5%ほどしか対象とされていない黒人・ヒスパニック・アジア系へのアプローチを増やしたりしているという話が紹介されました。
こうした行動を通して、広告、そしてブランドとしての市民権の再発明に取り組むと述べました。これら4つの再発明=Force for Good(良い行いのための正しいアクション)こそが、Force for Growth(成長の源)になるというのです。