同社が2020年7月に開始した「MATCH」について、メディアプロデューサーの瀧川千智氏に話を聞いた。
課題解決基点のクリエイティブ提案 個々の編集者とのマッチングも
当社では2020年7月、ソリューションチーム「MATCH」を立ち上げました。これは雑誌編集部が持つインサイトの“発見力”や新しいライフスタイルを世に普及させる“定着力”といったナレッジに、当社の持つプランニング力を掛け合わせることで、クライアントの課題解決に貢献するソリューションです。リリース時には17出版社・33誌の編集部をパートナーとして発表し、現在も拡大を図っているところです。
これまでも編集者のナレッジがマーケティング活動に生かされる場面は多々ありましたが、どうしても広告の出稿ありきで、話を進めざるを得ない部分もありました。しかし具体的な企画が始まる前段階、例えばコンサルティングといった場面でも、もっと編集者が持つリソースを活用できるのではないかと考えて、始めたのがフィー制を導入した「MATCH」です。編集者によるコンサルティングを広告に付随したサービスとしてではなく、ビジネスとして仕組み化していきたいというのがプロジェクトを立ち上げたきっかけです。
スタートしてから約半年、すでに「MATCH」発の事例も出てきています。例えばSCジョンソンの「カビキラー」ではインフォマーシャル風のテレビCMを、光文社『Mart』の小松編集長にクリエイティブディレクターとなっていただき制作しました。購入対象である主婦層のインサイトを熟知している小松編集長だけに、ターゲットに刺さるシチュエーションの設定やキーワードの開発、キャスティングを実施。実際、商品の売上増につながりました。
これまで問い合わせの多くは、ファッションや化粧品業界に限らず、営業局のメディア担当ではない部署からの相談でした。コロナ禍で多くの企業が、改めてターゲットのインサイトをふまえて商品やサービスを考え直すというフェーズにあるなかで、「MATCH」ができるインサイトの開発や、調査、マーケティングコンサルティングの仕組みを活用できるのではないかと考えています。
生活者の嗜好性が細分化し、複雑化しているなかで、各業界、それぞれに合わせたトライブマーケティングを行うことは増えてきています。
ただ、これは雑誌編集者がもともとやってきたこと。各ブランドが潮流をとらえて時には新たな言葉をつくることで、世の中ゴトさせてきたのが出版社でした。広告会社のストラテジックプランナーは市場分析を行いますが、編集長や編集者は、私たちの知らない領域の知識を持っている。長い間読者を見てきたからこそ、ターゲットのインサイトを時系列で、一段階深い所まで見ることができます。また、若手の編集者の方たちもそれぞれにコアな得意分野を持っていたりします。今後はこういうクライアントとやりたい、という要望を受けたり、複数の出版社でひとつのクライアントの課題に取り組むといったことも考えています。
博報堂DYメディアパートナーズ
雑誌局 アカウント推進部
メディアプロデューサー
瀧川 千智氏