WalmartとBest Buy 米国リテール業界の巨人2社による基調講演
今回のCESの場で、発信企業にあった大きな変化とは、WalmartとBest Buyという米国小売の巨人2社がそれぞれ基調講演に登場したことだ。以前より、CESにおいてリテール業界の存在感は高まっていたが、この2社による基調講演はこれからリテールがCESでの発言を高めること、そして変革の主役となる可能性を感じさせた。
Best BuyのCEOであるCorie Barry氏は、「オンライン化への変化が2倍・3倍へと加速し、3〜5年かかると思われていた変化が一夜にして起こってしまった」さらに、「2019年の行動に人々が復帰する世界はこないだろうと」と自身の考えを述べた。
またWalmartのCEOであるDoug McMillon氏は、「Walmartは、AIの未来が何を意味するのか、ロボット工学がビジネスをどう変えるのか、5Gが人々の生活や買い物の仕方をどう変えるのか?に注目をしている」と話し、顧客の買い物時間の節約にはパーソナライズへの取り組みが必要であること、それにはAIとデータの活用が肝要だと語った。
「ファクト」とセットで、サステナビリティ実現へのビジョンを語る
完全オンライン開催となった今年のCESだが、予想を超えて刺激が多かった。そして、CESで発信される企業のメッセージに大きな変化が起きていることを感じとった。ただ、やはりCESである。各社がサステナビリティや環境対応への重要性を語るだけではない。それを実現するテクノロジーへの取り組みをファクトとして説明し、製品やサービス、保有する要素技術の競争優位へ繋げ、ビジネスの可能性を示唆しているのだ。
GMは、EVへと大きく舵を切りブランドロゴまで刷新した。ビジネスモデル自体の変革もリアルに感じ取れた。Samsungも、新しい体験を提供する冷蔵庫から始まり、自社の半導体がエネルギーの効率化やCO2排出量削減に、どの程度貢献するのか数値を持って示していた。Intelも、セッションを通してデータセンターのエネルギーの変革についてロードマップを示した。地球環境という大きなテーマに対して、単なるCSR活動としてではなく製品・企業の競争優位につながることを示しているのだ。
これから日本企業もブランドコミュニケーション活動において、環境や社会的な責任に言及する企業は少なくないだろう。そのとき、どれだけファクトとセットで語れるのか?製品・サービス、エコシステムの変革とセットで発信することができるのか?マーケターが関わる領域がさらに深まり、それはテクノロジーへの理解とセットであることは間違いないだろう。