【CES2021】今後の買い物体験は「デジタルファーストメンタリティ」がカギ(玉井博久)

リアルな空間では安全性の担保がカギ

2020年の生活者のEコマースへのシフトは疑いようもない事実ですが、一方でベストバイの2020年の売上の40%は店舗でのピックアップだったようです。このことからも、実店舗のニーズが永遠になくなることはないと言えそうです。

ただし、店舗の役割はこれまでとは違う形になりそうです。フルフィルメント(主に商品の保管や受け渡し)の機能であったり、お客さまの疑問に答えるためのインタラクションやコンサルテーションといった機能であったりするでしょう。デジタルファーストメンタリティではありますが、現実空間がまったく必要ではなくなるというわけではありません。

また、実店舗などのリアル空間においては、安全性の担保がカギとなります。2021年はリベンジ消費が起こる可能性が高いものの、どう生活者に安全な実店舗におけるショッピング体験を提供するかが問われます。そのひとつの打ち手として考えられているのが、マスターカードやVISAが注目している「コンタクトレスペイメント」です。今後オフラインでのショッピングは、セーフティがカスタマージャーニーのポイントであり、タッチレスが加速すると両社は考えています。

そこでVISAが紹介したサービスが「タップトフォン」。生活者はクレジットカードかカードが表示されたアプリの画面のいずれかを、事業者側のスマホ(アプリを起動した状態)にタップするだけで、支払いを完了させることができるものです。これにより実店舗でもデリバリー先でもコンタクトレスな支払いをすることができ、合わせて感染症に対する不安を和らげることにつながります。

タップトフォンの使用イメージ。

このタップトフォンを手掛けたマジックキューブのCEOは、「たしかにタップトフォンは未来の姿ではあるが、現金での支払いからタップトフォンでの支払いへの変化は、人々がDVDからネットフリックスに移行したことと大して変わらない」と言います。今後オフラインでもオンラインでも買い物の形に面白い進化がありそうです。

玉井博久
Glico Asia Pacific Regional Creative & Digital Senior Manager 兼 江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。著書に『宣伝担当者バイブル』。2018年より3年連続CESに足を運び最新のデジタルテクノロジーを視察。得られた知見を、マーケティング、Eコマース、コンテンツプロデュースに活用。シンガポールにてASEANのECビジネスを2年で10倍以上拡大させる。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。ポッキーは、2020年にチョコレートコーティングされたビスケットブランドの世界売上No.1*として、ギネス世界記録™認定。

*タイトル:最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド/2019年 年間世界売上高 推計$589,900,000(国際市場調査データによる)国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる。

 

1 2
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事