この本の著者、梶祐輔さんの会社「日本デザインセンター」に僕はいました。その当時、広告はマスメディアの元気さと比例して活発に競い合うように表現され、駅貼りや電車内の中吊り広告がよく盗まれていました。
その勢いによって消費は加速し、刺激を求める一人として愛知から上京し、この会社に入社した僕は、半ば、それに耐えられなくなり、今の自分の活動テーマ「LONG LIFE DESIGN」へと逆向きに近い舵をきりました。
ちょうどその頃、この本は世の中に発表され、僕はD&DEPARTMENTという先のテーマによる生活用品店を開業するわけです。
その時のこの本の感想は「広告にもLONG LIFE DESIGN的な発想があるんだ」というもので、改めて当時買ったこの本を今、読んでみると、毎ページごとにアンダーラインが引かれる程に、自分が当時感動していたことが記されていました。特に「広告は商品をうるためだけではない」という考え。つまり、短命に消費を促す刺激だけの広告行為を「広告」と一括りにするのは違うということ。もっとじっくり掲載する媒体も育て、長期に渡り経営のビジョンとリンクさせながら「育てていく」感覚の表現こそ「広告」と呼ばなければならないと、この本は訴えています。
マスメディアの元気が無くなったことで「広告」も死んだと決めつけてしまわず、今こそ、この本を再読して、意識ある長期視点を持った本当の「広告」を作りたいと、改めて思わせる歴史に残る本だと僕は思います。
ナガオカケンメイ
D&DEPARTMENT PROJECTディレクター
デザイン活動家
「ロングライフデザイン」をテーマにD&DEPARTMENT PROJECTを創設。47都道府県に1か所ずつ拠点をつくりながら、物販・飲食・出版・観光などを通して、47の「個性」と「息の長い、その土地らしいデザイン」を見直し、全国に向けて紹介する活動を行う。2013毎日デザイン賞受賞。著書に『d design travel』『つづくをつくる』など。