生活者は様々なブランドを無意識のうちに分類し、頭の中で類型化しています。マーケティングでは、それをブランド・カテゴライゼーションという枠組みで整理しています。
ネオマーケティングは、その分類の一つである「想起集合(evoked set)」に注目し、早稲田大学の恩藏直人教授と共同研究プロジェクトに乗り出しました。
生活者が製品やサービスの購入を考えたときに買いたいと思う「想起集合」は市場シェアや認知率などとともに、マーケティングを実施する上で貴重な指標となります。共同研究プロジェクトで制定した調査ポリシーに基づいた「想起集合」に関するデータを蓄積・分析し、様々な提案を行うエボークトセット調査サービスを開始いたしました。
エボークトセット調査では、知名集合・想起集合・推奨集合を聴取しブランドが選ばれている理由を聞くことで、コミュニケーション戦略等の基礎データとして活用可能です。
単純集計だけではなく、想起率(想起数÷回答者数)や推奨率(推奨数÷知名数)を算出しブランドポジションを可視化します。
共同研究プロジェクトで実施した2つの調査結果をご紹介します。
調査①:自動車(カテゴリー)/電気自動車(サブカテゴリー)の調査結果
サンプルサイズ:1,000
サンプル回収構成:事前調査で月1回以上自動車を運転する人の中で性年代ごとの自動車運転状況をもとに回収割付
※純粋想起にて聴取しているため、カテゴリーとは別のブランドを勘違いして想起している場合がありますが、回答データのまま集計しております。
下図の調査結果をみると“自動車”カテゴリーではトヨタが想起率・推奨率共に高く盤石のポジションを獲得していることがわかります。
ランキング
散布図
一方で“電気自動車”のサブカテゴリー調査では日産自動車の想起率・推奨率が高まり、ランク外だったテスラも想起率・推奨率が高くなっていることがわかります。
日産自動車は電気自動車リーフをブランドとして持っており、最近のTVCMでも電気自動車や自動運転のPRを多く行っていることから、下図のように“自動車”カテゴリーでは取れていないポジションが取れていると考えられます。
また、テスラは日本国内ではまだ浸透していないものの世界的にニュース性があり先進的なイメージで取り上げられているため、ランキングでみると購入における想起数よりも推奨数が高い唯一のブランドとなっています。今後テスラのプロモーション次第では、日本国内市場においても国内自動車メーカーの大きな競合となることが予測されます。
ランキング
散布図
調査②:洗剤/オシャレ着用洗剤カテゴリーの調査結果
もうひとつ調査事例を紹介します。
サンプルサイズ:1,000
サンプル回収構成:事前調査で自分で洗濯洗剤を購入し、週に1回以上洗濯をする人の中で性年代ごとの回答割合をもとに回収割付
※純粋想起にて聴取しているため、カテゴリーとは別のブランドを勘違いして想起している場合がありますが、回答データのまま集計しております。
下図の調査結果をみると“洗剤”カテゴリーではアタックが想起率高いことがわかります。
ランキング
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一方でサブカテゴリーのオシャレ着用洗剤ではエマールが想起・推奨ともに高いポジションを獲得しています。
花王が持っているエマールブランドはオシャレ着専用というサブカテゴリーをつくり、アタックブランドとのカニバリゼーションを防ぎ、洗剤カテゴリーの中で共存させることで、カテゴリー全体で花王のシェアを拡大するマーケティング戦略を行っていると考えられます。
ランキング
散布図
まとめ
昨今では、様々なカテゴリーにおいて自社商品や自社サービスをブランディングし、競合他社と差別化させる施策が増えてきています。
ただしブランディング活動の最大の課題は効果測定が難しく、活動の価値や効果を可視化しづらい点にマーケティングやブランドの担当者は頭を悩ませることが多いのではないでしょうか。
今回紹介したエボークトセット調査では、生活者のココロの中にあるブランドに対するマインドシェアを数値化し理由を聴取することでコミュニケーション戦略に活かすことができ、さらには生活者の声を軸にブランドの方向性を意思決定していけるものと考えています。
Awareness Set(知名集合)=思い浮かぶブランド
Evoked Set(想起集合)=購入・利用時において、思い浮かぶブランド
Recommend Set(推奨集合)=勧めるブランド
を組み合わせ、さらに第一想起に関しては理由を聴取しブランディング活動を測定する調査スキームです。
株式会社ネオマーケティング マーケティンググループ
URL:https://neo-m.jp/research-service/evoked_survey/