鎖国時代の日本に学ぶ、コロナ禍でも経済成長を実現する方法

月刊『宣伝会議』3月号(2月1日発売)では「アイデアでコロナ鎖国を乗り越える!」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

鎖国時代の日本に学ぶ、この状況でも経済成長を実現する方法
海外との物理的な人の往来がかなわず、制限された条件のなかで新たな売上の創出が求められている現在の日本。
同様に、限られたルートのみで交易を行っていた江戸時代から、この状況を乗り越える知恵を学ぶことはできないであろうか。
日本史などの社会科講師として活躍する伊藤賀一氏が解説する。

日本に「鎖国」の意識はなかった?江戸時代にあった「4つの口」

グローバル化、ボーダーレス化が喧伝されてきた世界は、コロナショックによりローカル化、ボーダー化へ逆戻りしています。ボーダーといえば思い出されるのが、江戸時代の鎖国体制や身分制度。しかし、当時の日本は不幸せだったのでしょうか?上水道が完備された江戸の人口は世界最大。下水を肥料に利用するエコシステムや、階級ごとに相互扶助が行き渡った礼儀正しい国民性。何より、男女・年齢を問わない寺子屋教育は世界屈指の高水準にありました。

そんな江戸時代から、今後の経済成長について考えてみました。

「経済」という言葉は「経世済民(世を経め民を済う)」を略したもので、福沢諭吉が英語のeconomyの訳として使ったことが有名ですが、文字通り、決しておカネの話だけではありません。より大きな概念です。

続いて「鎖国」の語源について説明しましょう。オランダ商館の医師ケンペルが、帰国後に『日本誌』を著しました。のちに通訳の志筑忠雄がその一部を『鎖国論』として翻訳したことで、「鎖国」という言葉が初めて使われます。確かに西洋人からすれば日本は国交もなくオランダや東インド会社と交易しているだけの、「国を鎖している」状態でした。

しかし、日本側の意識はそうではありません。幕府には「4つの口」がありました(図表1)。

ひとつ目が長崎口。
幕府の直轄地で、長崎奉行を通じてオランダ、中国(明のち清)と交易していました。

2つ目が対馬口。
対馬藩の宗氏が幕府から許可を受けて朝鮮と交易していました。幕府には朝鮮通信使も派遣されています。

3つ目が薩摩口。
薩摩藩の島津氏が、幕府から許可を受けて琉球王国を実質的に支配していました。

4つ目が松前口。
松前藩の松前氏が、幕府から許可を受けて蝦夷地のアイヌと交易・支配していました。

このように、「鎖国」という言葉が使われてきましたが、実は当時の日本はそれなりに開かれた状態だったのです。現代の日本は、国際連合に加盟し北朝鮮を除くほとんどの国と国交がありますが、コロナ禍で実質的に行き来はできていません。外の世界と断絶はしていないものの、活発な交流が行われているとはいいがたい状況から類似点を見出し、現在我々は江戸幕府と似たような状態だと仮定できます。

田沼意次の経済政策を、今の日本に応用したらどうなる?

幕府の財政は7代将軍の頃には危機に陥っていました。財政難が続く中、小姓から10代将軍の側用人兼老中にまで成り上がったのが田沼意次です。彼は非常に優れた政治家兼官僚(当時は選挙がないので政・官は兼任)で、「現実主義的な経済改革」を行いました(田沼時代)。

田沼が築いた数々の新たな施策は、当時の江戸幕府さながら、「ボーダー化」「財政難」状態に生きる現代の我々にとって応用もできるのではないかと考えています。

—田沼意次が行った改革とは?また、田沼の改革を今の日本にどのように活用できるのか?
本記事の続きは月刊『宣伝会議』3月号(2月1日発売)に掲載しています。

日本史などの社会科講師/著述家/リングアナウンサー
伊藤賀一氏

リクルート運営のオンライン予備校『スタディサプリ』で日本史・倫理・政治経済・現代社会・中学地理・中学歴史・中学公民の7科目を担当する「日本一生徒数の多い社会講師」。
43歳で一般受験し、早稲田大学教育学部生涯教育学専修に在学中。

 

月刊『宣伝会議』3月号(2月1日発売)
第58回「宣伝会議賞」 一次審査通過者発表号

月刊『宣伝会議』3月号の巻頭特集企画は「アイデアでコロナ鎖国を乗り越える!」。
コロナ禍で外国人観光客の流入数が激減し人の往来がほぼ皆無になっている状況下、日本国内における需要の喚起、あるいは物理的な人の往来がなくなったいまだからこその、オンラインを活用した越境ECなどといった新しい売上はつくれないのでしょうか。大手企業から中小店舗まで、インバウンド需要に期待ができない中での市場開拓方法を考えます。

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