新型コロナウイルス感染拡大により、共働き世帯の生活やインサイトはどう変わったのか、ハウス食品、バッファローと異なる業界からゲストを招いて情報を共有した。
【登壇者】
ジェイアール東日本企画 イマドキファミリー研究所リーダー
高野 裕美 氏
ジェイアール東日本企画 イマドキファミリー研究所
澤 裕貴子 氏
ハウス食品 事業戦略本部・食品事業二部長
清水 愼太郎 氏
バッファロー 事業本部・デザイン室長
小幡 真也 氏
キーワードは「夫婦でオールシェア」「思考のアウトソーシング」
第1部と第2部では、同研究所のリーダー高野裕美氏と澤裕貴子氏が講演を行った。
高野氏は「イマドキ共働き子育て家族の生活戦略」と題して講演。研究所の調査データから、子育て中の共働き家庭の傾向を紹介した。調査からは、共働き家庭のママは時間的な余裕がないという傾向が見て取れるが、子どもの年齢が低いと多少の余裕があるという回答が増える。高野氏はこの結果から「子どもが大きくなって子育てに手がかからなくなったというステレオタイプ的な考え方は現代的価値観とは異なっている」と指摘した。
また、全国をエリア別に分けたデータからは、中京地域を例にとると、関東と比較して時間的な余裕を感じている様子が見えた。これは通勤方法や住居事情によるもの。電車通勤が7割の関東と違い、中京は車通勤が6割になるため、準備や出発時間の使い方も異なる。また、夫婦の両親と近くに住んでいるかどうかも影響しているのではないかと分析した。
ただ、大きな傾向としては、家事にかける時間や夫婦間で家事をシェアして行う傾向などに、地域差はほとんどないことが分かった。
高野氏はまとめとして「夫婦でオールシェア」、「思考のアウトソーシング」といったキーワードを紹介。イマドキファミリーのインサイトをくすぐるためには「身体的時間短縮から頭脳的時間短縮(=考えることから解放されたいというニーズに応える)」、「楽は生活の標準仕様(プラスアルファの価値が必要)」などが重要だと指摘した。
第2部は「コロナ禍におけるパパ・ママの意識・行動変化」と題し、澤氏が講演。2020年5月25日に緊急事態宣言が解除され、都道府県をまたぐ移動も緩和された6月25日から7月1日までの期間に研究所が実施した調査をふまえ、子育て世帯の意識がどう変わったのかを紹介した。
コロナ禍によって共働き家族も在宅時間が伸び、メディアとの接触時間にも変化があった。2016年の調査と比較すると、テレビとインターネットとの接触時間は増加。それでもテレビを見る時間は専業主婦よりは短いことが分かっている。
メディアと接触する時間帯も、在宅時間の増加に伴って、インターネットを中心に日中の12時~16時が増えた。ただ、テレワークの実施率では、関東の共働きママ35.5%に対して、例えば中京では14.9%と地域差がある。時間的余裕に関しては、引き続き「ない」と答える人が半数を超えた。テレワークにより時間の余裕ができたと答える人は19%から28%とわずかに増えている。テレワークが多くの企業で導入されたことにより、共働き・専業主婦世帯にかかわらず男性の家事参加は増えた。
これらの研究結果を受けて、澤氏はポイントを3つあげた。まずは母親を中心として、生まれた時間的余裕を家族や子どもとの時間に使っていること。2番目に、親戚や友人といった距離感の離れた連絡や交流ではなく、より身近な家族単位の絆が重視される傾向にあるということ。3つ目は、特に関東地域の専業主婦世帯では、子供や父親の在宅が増えたことにより、母親の負担が増えているのではないかということだ。
そのため、家族で過ごす時間の大切さを見直す共働き世帯の母親が増える一方、専業主婦は自由時間の減少によりストレスを感じるケースもある。コロナ禍による行動制限が生み出した影響には共働きと専業主婦世帯によってギャップがあるようだ。
澤氏は「コロナ禍を契機に家族の楽しみだけではなく、個人としてのリフレッシュする時間への意識が高まった。家族との時間・自分の時間それぞれを充実させるためのニーズが高まるのではないか」と話した。
あわせて、今後は専業主婦家庭を含め、育児や家事において、今まで以上に夫婦間でシェアしたり、商品やサービスを活用するなどして、家族と過ごす時間を生み出そうとするニーズが増えると予想。また、夫婦と子どもという最小単位での活動と、自分時間を充実させるための商品やサービスを求めるようになるのではないかと指摘した。