はじめから80点の完成度を求めるのはNG!日本人が海外パートナーとうまく仕事を進める方法

打ち合わせは45分、あなたの1時間には50,000円の価値がある。

日系の方々と仕事をすすめる中では、1時間、ときに2時間を越える打ち合わせをすることもありますが、海外パートナーと仕事をする上で1時間を越える打ち合わせをすることはそうそうありません。

マーケティング・広告業界でもフィー制度が一般的で、あくまで参考ではありますが、ジュニアの担当レベルでも1時間200ドル、エグゼクティブクラスになると1時間1000ドルのフィーを請求することもある米国やオーストラリア市場においては、時間にかける意識が異なり、少ない時間でより効率的な成果をあげることが求められます。

日本人同士のはじめての商談の場合、礼節を重んじる文化から、挨拶にはじまり、自己紹介、プロジェクトの背景などを丁寧に説明した上で本題に入るといった場合がありますが、当社で日系クライアントの方と現地パートナーも交えた3社ミーティングをセッティングする際には、なるべく挨拶は5-10分程度で済ませ、議論に多くの時間を割けるように心がけています。特にワークライフバランスも重視され、残業もなるべくしない労働形態が一般的なオーストラリアでは、少ない時間のなかで、テキパキと要素を絞った打ち合わせをする方が、結果として良い信頼関係を築くことにつながります。

効率的な打ち合わせを実現するために、私たちの会社ではスタッフにも2つのことを意識してもらっています。

事前に資料を目を通す、要点を絞って議論するといったことはもちろんですが、ひとつめに、社内のルールとして、打ち合わせは25分、45分のいずれかで設定するようにしています。

30分の打ち合わせを25分、1時間の打ち合わせを45分にすることで、各スタッフはより効率的な打ち合わせを意識するようになりますし、仮に45分の打ち合わせが伸びたとしても1時間以内には終わり、次の仕事にリズム良く移ることができる。

ふたつめのルールは、スーパーバイザー以下であれば自分の1時間には少なくとも50,000円、ディレクター以上であれば100,000円の価値があるという意識を持って打ち合わせに臨むことです。リソースマネジメントの観点からは、ミーティング自体がコストであり機会損失にもなり得ることを徹底的に周知させています。このような価値を1時間で出さなければいけないとすれば、30分を資料説明にのみ費やすといった考えには絶対にならないはずです。

各スタッフが、海外のパートナーと同様のフィー単価を意識することで、効率的な打ち合わせをして仕事を進めてもらうよう促しています。

ミーティングの目的に合わせて、ハイテーブルやチェアー、オープンスペース等を適切に使い分けながら、限られたミーティングの時間で最大のアウトプットを出すことを繰り返し意識する。

日本人はシャイすぎる。感謝はオーバーリアクションくらいでちょうどよい。

パートナーに気持ちよく仕事をしてもらう、なんて当たり前のことですが、例えばメディア会社に問い合わせをする際、どの会社にも共通のメディアキットと定価が提示される日本と違い、海外では定価はあってないようなもの、良いディールを引き出すために、日頃から良好な人間を築いておくに越したことはありません。

自社と仕事をすることによる明確なメリットやビションを見せる、実際にプロジェクト実績を積み重ねて信頼関係を築いていく、といったことももちろん重要ですが、それ以外にも常日頃からパートナーへの感謝を示すように心がけています。

言わなくても通じ合う日本人、言いたいことは伝え合う西洋人、というのはビジネスにおいてもあてはまります。どうしてもシャイなところがあるのか、日本人スタッフのパートナーとの接し方を見ても、もう少し感情表現を出した方が良いのに、と思うシーンを目にすることがあります。パートナーから提案資料をもらった時、こちらの要望に答えてくれた時、私は少し、オーバーリアクションと見えるぐらいに感謝を表現しています。

また、例えば資料が希望通りの仕上がりでなかったとしても、まずは短期間で私たちのために働いてくれたことに感謝を示し、その上で改善点を指示する。プロジェクトで失敗がおきた時にも、怒って締めるよりも、一緒に解決していこうというスタンスで接する。

あなたと一緒だから良い仕事ができている、という気持ちを示していくことが、まわり回っていざという時に自分のために動いてくれるチーム作りに繋がっていくのではないでしょうか。

ローカルパートナーの方へ話すときは、ローカルの人にきちんと内容を理解してもらえるようにはっきりと話をし、日本人に対して話すときは日本人に受け入れられるようにクロスカルチャーな環境で適切に話ができる複数の引き出しを持っておくのがいい。

ローカルパートナーへの信頼をしっかりと構築できれば、時にそれは日本人同士を超えるような信頼関係に発展することも多々ある。

以上、今回は海外パートナーとの働き方のポイントをお話しさせていただきました。明日からでも取り組める、小さなポイントが実は大事であったりします。次回のコラムでは、グローバル市場におけるクリエイティブ開発の進め方についてお話しようと考えています。

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作野 善教(doq®グループマネージングディレクター)
作野 善教(doq®グループマネージングディレクター)

2001年ビーコン・コミュニケーションズ入社、日本市場でのマーケティング全般における経験を経て、2006年より米国広告代理店レオバーネットのシカゴ本社にて米国ブランドのアジアパシフィック及び欧州・南米市場向けマーケティング立案を担当。2009年に世界と日本をマーケティングとイノベーションで繋ぐことをビジョンにシドニーでdoq®を創業。異なる文化と背景を持つ多様性に富んだチームと共に、20年50社以上に渡るグローバル市場でのマーケティングを手がけ様々な賞を受賞。オーストラリアの移民起業家を称えるエスニックビジネスアワードにおいて史上2人目の日本人ファイナリストにも選出される。2008年シカゴ大学ニューアントレプレナーズプログラム修了。2011年ニューサウスウェールズ大学AGSMにてMBAを取得。2014年クロスカルチャーマーケティングエキスパートとしてTEDxTitechに登壇。2018年ハイパーアイランド・シンガポール校にてデジタルメディアマネジメント修士号を取得。

作野 善教(doq®グループマネージングディレクター)

2001年ビーコン・コミュニケーションズ入社、日本市場でのマーケティング全般における経験を経て、2006年より米国広告代理店レオバーネットのシカゴ本社にて米国ブランドのアジアパシフィック及び欧州・南米市場向けマーケティング立案を担当。2009年に世界と日本をマーケティングとイノベーションで繋ぐことをビジョンにシドニーでdoq®を創業。異なる文化と背景を持つ多様性に富んだチームと共に、20年50社以上に渡るグローバル市場でのマーケティングを手がけ様々な賞を受賞。オーストラリアの移民起業家を称えるエスニックビジネスアワードにおいて史上2人目の日本人ファイナリストにも選出される。2008年シカゴ大学ニューアントレプレナーズプログラム修了。2011年ニューサウスウェールズ大学AGSMにてMBAを取得。2014年クロスカルチャーマーケティングエキスパートとしてTEDxTitechに登壇。2018年ハイパーアイランド・シンガポール校にてデジタルメディアマネジメント修士号を取得。

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