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テレビ受像機での動画配信と地上波テレビ、試聴時間の比率は「1:4」?
「ビデオコミュニケーションの21世紀」というこの連載(と言うにはあまりにも不定期ですが)の視点で見ると、2020年はエポックメイキングな年でした。映像メディアの構図が大きく変わってしまった。簡単に言うと、すべてについて支配的だった「放送」が新参者の「配信」にずいぶん押されてしまいました。
思えばこんな記事を書いてから5年半。
今年秋、上陸決定!Netflixは黒船なのか?VODの進路が日本のテレビの将来を左右するかもしれない
まさにここに書いた通り、2020年にはNetflixなどの映像配信サービスが黒船の役割を果たし、既存のテレビ放送に対して変化を促しました。
皆さんの周りも、昨年夏には「愛の不時着」いいよねー!「梨泰院クラス」面白い!などとまず配信の韓流ドラマについて盛り上がったことでしょう。12月には「今際の国のアリス」すっげえ!とあちこちで声が聞こえたはずです。実際、私の周りの、テレビはまったく見ないと言ってた若者たちもこれらの配信ドラマの話をしています。
配信に勢いがついたのは、ただ普及しただけでなく、テレビ受像機で多く見られるようになったことが大きい。配信サービスにスマホで入った人々が、テレビでも見るようになってきた。コロナ禍での巣ごもり生活がこの傾向に拍車をかけました。インテージ社のテレビ視聴データによれば、テレビ受像機における「アプリ」の起動率が昨年は前年よりグッと高まったことがわかります。
4〜5月の緊急事態宣言下でアプリの起動率が前年比6〜7割ぐらい増加し、その後も3〜4割増で安定している。地上波テレビも少しは増えたのですが、アプリ起動の方が断然増えた。テレビのアプリとは、ほぼ動画配信サービスのことなので、コロナ禍でテレビで配信を見る人がぐんと増えたと言えます。地上波テレビの試聴時間との比は「1:4」にまでふくれたとの説もあるほど。
巣ごもり生活が続いて、地上波テレビも昼間の視聴が増えたでしょう。テレビをそれまであまり見てなかった若い世代が「テレビってけっこう面白いんだね」と感じたのだと言われました。でも上のグラフを見るとそれは一時的な現象だったようです。それより、「うちのテレビってネットに繋がるんだね、YouTube見ようか、Netflixって最近よく聞くけど何なの?」という感じで配信サービスに一気に人びとが押し寄せたのでしょう。一度やり方がわかると、徐々に頻度が増して生活に定着していったようです。
動画配信といえばスマホ、とも限らなくなってきた。それが2020年でした。大学生の子どもたちが50代の両親と一緒にテレビ受像機でYouTubeをよく見るようになった、との話も聞こえてきました。だって動画ってどうせ見るなら大きな画面で見る方がいいですからね。どう繋いでどのボタンを押せば見られるかがわかれば、自然と配信に費やす時間は増えるでしょう。