フジテレビジョンでは、新しいテレビCMの形を追求。その構想の具現化のひとつがテレビCMとスマホをリアルタイムでつなげる「CxM シーバイエム」だ。直近の「CxM」取り組みとその成果について同社の冨士川祐輔氏に話を聞いた。
専用アプリのダウンロード不要視聴者参加のハードル下げる
フジテレビジョンが2019年9月からテレビCM出稿企業に提供している「CxM シーバイエム(CxM)」は、テレビとスマホを連動させることで、視聴者参加型、体験型のCMをつくることができるサービスだ。
視聴者はCMやテレビ番組放送中に表示される二次元コードを自身のスマートフォンで読み込むと、放送内容と連動したコンテンツをリアルタイムに体験することができる。
本サービス企画統括の フジテレビジョン 総合事業局 デジタルデザイン部 企画担当部長 冨士川祐輔氏は「『CxM』は“遊べる楽しいCM”をつくることを目的にしています。視聴者には、番組だけではなく、テレビCMもコンテンツとして楽しんでいただきたい。視聴者にとって楽しいCM体験は、広告主にもテレビ局にもメリットが生まれ、三方よしになる」と話す。
「CxM」の特徴のひとつは、視聴者の参加ハードルが低いこと。参加に際して、アプリケーションのダウンロードやアカウント登録にともなう個人情報の事前提供も不要だ。これによって、視聴者に負担をかけず、多くの人が手軽に楽しめるようになっている。
直近でも、広告主企業の活用がさらに進んでいると、冨士川氏は話す。
4回のCM放送で約3万人が企業サイトに登録
昨年11月には、サンスターが提供する番組『My Routine ~太陽と星空の時間~』で4週にわたって、「CxM」を活用した「G・U・M」のプロモーションを実施。番組内で番組内容に関連した視聴者参加型クイズを出題し、CM枠でも同様のクイズ形式で「G・U・M」に関連したクイズを出題。どちらも視聴者は二次元コードを読み込み、クイズに回答すると、デジタルギフトが抽選で当たるというもの。さらにCM枠では、参加者全員にコンビニで使える「G・U・M」商品の割引クーポンも配布した。
「リスティング広告はもちろん、SNSでの発信やターゲティング広告など、デジタルのキャンペーンも同時に展開しました。オーガニックでも、クイズ参加が楽しいというコメントがSNSで拡散され、認知が広まり、放送回数を重ねるごとに参加者も増加していきました」(冨士川氏)。
本プロモーションは、サンスターの会員サイト「クラブサンスター」への新規会員登録をKPIのひとつに設定していたが、関東エリアのみでの放映、かつ本編2分、インフォマーシャル30秒というミニ枠にも関わらず、計4回の実施で約3万人(UU)獲得という成果につながった。
サンスターからも「KPIのひとつである『クラブサンスターの会員獲得』を最大化するためのキャンペーン設計が機能し、回数を重ねるごとに参加者が増加しました。今後も、当社の企業理念浸透や商品理解を高める新しい仕掛けとして、有効活用していきたいと思っております」と反響があったという。
VR体験ができるテレビCM約35万人が体験
また今年1月1日、2日には、日産自動車が「CxM」を活用し、運転支援システム「プロパイロット2.0」の擬似試乗体験を目的としたテレビCM「新春お年玉プレゼント supportedby 日産スカイライン」を実施。視聴者はテレビCM中に表示される二次元コードを読み込むことで、「プロパイロット2.0」でハンドルやアクセルに触らずに運転するお笑い芸人、「土佐兄弟」と同乗しているようなVR試乗体験ができるというもの。同時に、車内に隠されたキーワードを発見してクイズに回答すると、抽選でデジタルギフトが当たるプレゼント企画も実施した。
「『プロパイロット2.0ハンズオフドライブ』を多くの人に体験してもらう」という目的で実施したところ、CM放映3回(全国エリア)で約35万人が体験するという大きな成果につながった。こちらもSNSキャンペーンを併せて実施、視聴者からはCMと連動するVRハンズオフドライブ体験が“楽しかった”“驚いた”と言うポジティブな意見が多く、狙い通りの効果を確認できた。
「本施策はマスメディアの“リーチ力”と“新しいVR体験”を上手くかけ合わせることができた事例だと思います。実際に、リアルに試乗を促そうと思っても、かなりの見込み顧客でない限り、体験してもらうことは難しい。また、Web上にVR体験コンテンツだけを用意しても、やはり興味関心の高い顧客しか利用しないでしょう。しかし、マスメディアというテレビで多くの人にリーチし、さらに“楽しい体験”ができることで、『プロパイロット2.0』と親和性の低い層へもリーチし、自発的に興味も持って楽しんでいただけたと考えています」(冨士川氏)。
活用が広がる「CxM」だが、まだまだ可能性は広がると冨士川氏は続ける。
「CxMは認知から直にコンバージョンに繋げるソリューションです。デジタルでのコンバージョンはもちろん、今後は流通企業と連携し、リアル店舗送客の仕掛けづくりも視野に入れています。ソリューションとして確立できればGRPのように棚取りの際の新しい指標にもなり得ると考えています。また、コロナ禍においても、場所や時間に紐づけたインセンティブにすることで、人流をコントロールするなど、時代に適した活用も可能だと考えています」(冨士川氏)。
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