「いいね!」な自分ばかりを見せていたら、自分を見失う
澤本:それはすごくいい話ですね。普通に今いろんな人がやっていることって、それこそTwitterでもFacebookでも、「いいね!」って言ってほしいがための行動ですよね。でも、人間的に、テストステロン的にはそうじゃないってことですよね。
長嶋:FacebookとかTwitterとかSNSで「いいね!」をもらいたいがために自分を見せるっていうのは、承認欲求を満たすためだよね。一般の方も我々も承認欲求とか自己実現欲求っていうのが必ずあって。今や個人が自分のチャンネルを持っていられるわけですから、承認欲求は誰でも満たせるわけですよ。でも、テレビっていうのは今まで限られた人しか出られなかったじゃない。
澤本:はい。
長嶋:でも今は、別にSNSがあるわけだ。僕はもしかしたら、承認欲求が満たされている方かもしれない。生まれた時からカメラが回っているからね。リスナーの皆さん、自慢して申し訳ないんだけど、これは事実なので。
一般の方が「いいね!」をもらいたい、自分の承認欲求を満たしたいって思うのは分かるんですけども、でも自分の良い部分ばかりを見せて「いいね!」をもらって満足していたら、自分がどういう存在か絶対に見失いますよ。なぜなら人間っていうのは、悪い部分もあるし、人に見せられない部分もあるわけだし。「いいね!」をもらいたい人たちは、自分の中に潜む悪の部分とか、ダーティーな部分とかって消しながらいいものばっかり出すわけでしょ?
中村:そうです。
長嶋:そういうことでしょ?敵をつくらないで、味方をつくろうとする作業をしているってことでしょ?
澤本:はい。
長嶋:全くナンセンスです。例えばいま地球の人口70億人以上で、みんなが何兆個っていう細胞を持って、アイデンティティっていうのは必ず全員ある。そこで僕が思うのは、自分の存在意義にどうやったら自分で気づけるかを、神様がいろんな試練を通じてチャンスを与えてくれているんですよ。その時に自分の良い部分だけ出しちゃって、それこそ虚像虚飾をいい部分で固めちゃったら、やっぱり僕は自分を見失うと思います。だって「いいね!」がもらえなくなっちゃった時、その人たちはどうするんですか?「いいね!」をもらいたいがために迎合するというか、媚びを売るというか、そういう考え方は多少あるでしょ?
澤本:そうですね。
長嶋:自分がパワーや情熱をもって、自分のために、自分がどうやって生きていくかっていう術は、「いいね!」に迎合する姿勢を消したら絶対見えてくると僕は思うよ。僕自身も本音でなるべく言いたいと思っているし、敵をつくる、嫌いな人をつくるってところに関しては意図的にやっていることもたくさんあります。そのほうが実は楽な人生なの。他人と比べない自分をつくったら、本当に楽ですよ。みんなやっていないけどね。
澤本:はい。
長嶋:もし自分が仙人で山の中にいたら、別に敵も味方もいないから楽だろうだけど、東京って1300万人も人がいて、日本の中では人口が一極集中していますよ。その中で他人と比べないっていうのは、実は大変なことかもしれないけれども、僕自身はそっちに目覚めてから、すごく楽になったなあと思っていますね。
権八:何がきっかけで目覚めたんですか?
長嶋:そうね、精神的とか肉体的にそれなりに負担がかかって、自分の思い通りにならないというか、まあ自分がコントロールできない時期があったので、そこを治すためっていうのが理由かな。自分のためですよ。はっきり言って。
中村:じゃあ一茂さんの中にも「実は人に合わせちゃって、それで無理しちゃっていたなー」みたいなことを思った瞬間はあったということですか?
長嶋:それ以外にもあったと思いますね。僕は野球をやってきて年功序列や縦の関係を重んじてきた人間なので。そこはきっちりしなきゃいけないと思っていて。それ以外の部分では、なんか偉そうな話をしたけれども、要は好き勝手に生きればいいんですよ。たぶん学校の先生はこういうことはまず言わないし、自分勝手なことをしちゃいけないとか、人に迷惑をかけちゃいけないって教えるはず。でも、僕は人に迷惑をかけないで生きていくことはできないですね。絶対無理。だって自分が今ここの席にいるってことは、もしかして他にここに座りたいタレントもたくさんいるわけだから。
中村:まあまあまあ。
長嶋:だってこの席1席しかないんだから。でもここに出たいタレントがたくさんいる。その人たちをどけて僕が座っているんだから。その人たちからしてみたら迷惑でしょ?(笑)
権八:そんなに人気番組ではないです(笑)。ありがとうございます(笑)。
長嶋:いやいや、人気番組ってことでいいのよ。だから自分が迷惑をこうむったとしても、お互いさまっていう部分も気持ちは大事だろうし。
澤本:はい。
長嶋:好き勝手っていうと、言葉が本当に良くないんだよなあ。そうだ最近CMでさ、「がんばるな、ニッポン」みたいなテレビCMやってるじゃない。
権八:やってましたね。サイボウズかな?
長嶋:よくやったなーと思っているんだよね。何でもかんでも100%頑張っていたら24時間で体壊しますよ。いや、話飛んじゃったね。
中村:WEB野郎中村は、かなり目から鱗が落ちましたね。やっぱり仕事もありますんで、会社のやつを食わしていくためには迎合しようとか、八方美人になろうとか…。
権八:経営者なんです。社長だから。
長嶋:ああ、なるほど。ただ人それぞれだと言っても、リスナーの人たちからは反論が来るんですよ。「一茂は立場が違うでしょ!」と。たしかに僕は組織に入ったことはないし、24年間も個人事務所でやってきているから、勝手にできる部分もあるんだけどね。
中村:いやでも分かりますよ。敵を作らないと。
長嶋:そうそう。自分の信念や確固たる理念を持っていれば、自分が言いたいことはどんどん言ってくべきじゃないかと思う。日本人って自分を主張するのがすごく下手な民族で、そういう教育を受けてきてないから。
こないだのトランプとバイデンの討論は、ひどいなーと思ったけれどもね。ちょっと好き勝手なことを言い過ぎていてね。日本人は奥ゆかしい部分は大事にしつつも、でも好きなことは言ったほうがいいと思います。
澤本:それこそモーニングショーなんかで、一茂さんがしゃべることにみんなが「そうそう」って思うのは、好き勝手っておっしゃっているけど、僕らが遠慮したりして言えないことを言っている…。
権八:そうそう、言ってくれるから(笑)。
澤本:特にテレビなんかで、「こんなことを言っちゃいけないだろうな…」って思っていることを全部言ってくれているから、「そうだよ!」って思うんだよ。
権八:はいはいはい。
長嶋:そう思われるためにしゃべっているわけじゃないですけど。そう思ってしゃべっていたら、たぶん視聴者は気づくと思います。
中村:なるほど。
長嶋:そういう思いはないですよ。あくまでも自分の主義主張、主観で話をするっていうのが大事だなって思います。