好かれないのに期待はされる。だから二世は生きづらい。(ゲスト:長嶋一茂)【後編】

小学生の野球の試合に、新聞全紙が取材に来た

澤本:プロ野球に入られた時には、全然いける!って思って入っているんですよね?

長嶋:もちろん。1年目から新人王、本塁打王を取るぐらいの感覚でいたからね。それが自分の思いと現実的な部分が開きすぎるとやっぱり疲れるよ。開きをつくったのは自分なんだけどね。

澤本:(笑)。

長嶋:でもやっぱり周りからの期待を、潜在的には感じていて。それぐらいしなきゃいけないんじゃないか、みたいな気持ちもあったかもしれないね。

中村:一茂さんは子どもの頃は、野球の練習でも素振りとかで人一倍努力していた派なんですか?

長嶋:僕は、やっていたと思うよ。ただ、他の人の練習を見ていないから分からないけど。「一茂はサボってたサボってた」ってみんなはバカにするんだけど。

一同:(笑)。

中村:すごくナチュラルボーンな印象が(笑)。

長嶋:僕の中では「バカにすんな!」と思っていて。どう考えてもそれなりに練習しなきゃプロになれないでしょ?

権八:でも一度、小学校の時に途中で野球をやめていますよね?

長嶋:うん、ちょっと騒がれすぎたからね。小学校の4年か5年で僕が野球の試合に出るとなったら、本当に新聞全紙が来たからね。

澤本権八中村:あーー。

長嶋:テレビカメラも来るし、またごめんなさいね、リスナーの方ね。自慢しているみたいで。

中村:いやいや。

長嶋:でも事実なんでね。

権八:全然思わないです。

中村:期待も裏切れないし、やっぱりすごかったわけですよね?

長嶋:そうだね、やっぱり期待はあったんだろうねー。二世ということでね。そうだ!期待っていうワードが出たけど、僕の中で一貫しているつもりなんだけど、自分が楽に、楽しく生きるために人に期待をしちゃダメだね。

澤本権八中村:あーー。

長嶋:他人に期待しちゃうとね、自分がその人に見返りを求めちゃうことになるんだよね。僕も50歳を過ぎて、自分にもあんまり期待しない。やっぱりさっき言ったみたいに小学校の時にいろいろ期待されて、まあ中学は野球をやっていないので高校の時にまた野球を始めて、またマスコミにたくさん来ていただいて。期待されているのかなーって。そうすると今度ね、父親と僕自身を誰かが比較するわけ。

澤本:はい。

長嶋:これがウザくてしょうがないわけ、はっきり言って。2代目ってね、だいたい日本人はみんな好きじゃないんです。今回菅さんが総理になられたけれども、菅さんは秋田出身で、そういうサクセスストーリーみたいなものが日本人は好きで、基本的にジュニアとかお坊ちゃん、二世って、みんな嫌いなんです。だから自分が好かれようとする作業も無駄なんです。

権八:なるほど。

長嶋:そこから好かれるってまずないからね。だからもう自分の思いで全部突っ走ればいいんですよ。

中村:二世は、不遇ですね。好かれづらいのに期待はされてしまうっていう。

長嶋:そうだね!ほんとそう。よく言ってくれました。

一同:(笑)。

長嶋:自分で言いたかったんだけど、自分で言ったらあれだなぁと思って言えなかったんだよ。本当にそうなの。人生がどんどんどんどん窮屈になってくるんです。窮屈にしないために、嫌われることを恐れちゃいけない。だから周りはどうでもいいんです、はっきり言って。

澤本:はいはい。

長嶋:自分が自分らしく生きるために、自分ができることを日々やればいいんです。できないことはやる必要はないんです。できないことまでやるみたいな、パフォーマンスを120%出すみたいな言葉があるけど、人間は100%以上出ないから。

澤本:(笑)。

長嶋:やれることだけやればいいんじゃないの。それが自分だから。上を見たらキリがないし、下を見てもキリないから。やっぱり自分が自分らしく生きるためには、上も下も目指す必要はないんじゃないかな。

次ページ 「小学3年生で『空手バカ一代』に憧れ、プロ野球引退後に極真空手に入門」へ続く

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