560人が「変わる」と決意表明
——社員一人ひとりの決意を実名とともに掲載した血判状のようなクリエイティブもあります。どのような想いを込めたのでしょうか。
「決めた。」というコピーが決まり、次に決まったのがこの血判状のビジュアルでした。当初から、社員一人ひとりの決意表明を記載することも決めていました。
中には実名を出すことに抵抗のある社員もいました。社内での説明会を経て、社員809人のうち実名を出してもいいと賛同してくれた約560のメッセージが、ここにすべて込められています。
これだけの社員が賛同してくれたということそのものが、組織改革のひとつの成果だと感じています。
地域メディアのバリューを生かす
——広告では「マスコミをやめる。」と宣言されましたが、今後、具体的にはどのようにアプローチをしていきますか。
当社は静岡に情報網や独自の取材先があり、我々にしかできない紙面、我々にしかできない記事をつくることができます。その強みを追求していきたいと考えています。
例えば、静岡新聞の夕刊には「茶況」というコーナーがあります。お茶の取引市場や価格の相場などについてくまなく紹介されており、お茶カフェオープンの話題や、害虫への注意喚起など、お茶に関するあらゆる話題を扱う場です。
このコーナーは当社の記者が日々生の動きを追いかけている全国でも最も充実した情報の宝庫で、静岡のみならず、日本全国の茶葉生産農家・取り扱い業者のみなさんからご好評いただいています。
また、静岡にはJ1~J3までプロサッカーチームが4チームあります。バスケットボールチームも新しくできたばかりです。こうした情報も全国へ発信するニュース価値のあるものです。
つまり、静岡県の情報を知りたければ、我々の右に出る者はいません。有料でも読みたいという読者はいるはずです。そのため、静岡新聞の具体的な取り組みとして、2021年3月中旬に有料(月額3500円)のデジタルニュースメディアをローンチします。
私は、ニュースというものは有料であるべきだと思います。新聞のウェブ版をリリースするとき、各社がこぞって無料でニュースを提供したことは、大きな失敗だったと捉えているんです。今回、編集サイドからデジタルニュースメディアにチャレンジしてみたいという要望をもらったため、トライしてみることにしました。
まずはウェブサイトからスタートし、ゆくゆくはスマートフォンアプリ化も検討しています。東海地震、南海トラフ地震も避けて通れませんから、災害情報をはじめとする速報の配信も強化していくつもりです。
——放送局としては、どのように「ユーザーファースト」の取り組みを行いますか?
オリジナルコンテンツの制作力を高めるために、現行11.5%の自主制作率(静岡放送調べ)の水準をできる限り維持していきます。
動画配信にも力を入れるつもりです。新たに動画チームを発足させ、オリジナル動画を制作中です。今でも当社が主催するゴルフトーナメント「JLPGA ステップ・アップ・ツアー ユピテル・静岡新聞SBSレディース」では、YouTubeでライブ配信を行うとともに、注目選手にフューチャーした動画の後日配信もしています。
——企業変革のゴールについて、イメージはありますか。
企業変革にゴールはありません。トライ&エラーを繰りかえして、その時々でベストな形を模索していく必要があるでしょう。
社員がひとつになって、一人ひとりが自律的に動ける会社になることが、ある意味でのゴールなのかも知れないと思っています。