3つの基準のもと容器ボトルを開発
Loopの容器ボトルはテラサイクルがガイドラインを定め、「耐久性」「洗浄のしやすさ」「LCA(Life Cycle Assessment)」という3つの基準のもと、メーカーが容器を開発しLoopが試験を行う。最低でも10回繰り返して使用でき、洗浄しやすく衛生面にも配慮したシンプルなデザインであること。また従来品に比べて製造、使用過程でCO2排出量がどのくらい抑えられるかという点も配慮が必要だ。ステンレスやガラスなど、容器に使える素材についても定められている。
「これらの基準を満たそうとすると、自ずと削ぎ落とされたシンプルなデザインになります。機能性が高いことはもちろん、制限がある中でブランドの世界観をいかに表現し、“パッケージがかっこいいから使いたい”という気持ちにさせるか–先行する各国でも試行錯誤が繰り返されています」(冨田氏)。
たとえばアメリカでは、ハーゲンダッツがステンレスの容器でアイスクリームを販売しているが「容器を持つ手が冷えてしまう」という声が多かった。そこで容器を二重構造にして、冷たさが直接伝わらないよう改良した事例がある。
日本では今回、ロッテがLoop向けに「キシリトールガム」のパッケージを開発。耐久性のあるステンレス製の容器を採用した。サテン仕上げの表面加工で落ち着きのある質感を表現したほか、レーザー加工でブランドロゴを施し、繰り返しの洗浄によるデザインの劣化を防いでいる。中の構造も、喫食時に手を入れやすくリユース時に洗浄しやすいよう広口に。蓋は開閉しやすいよう、スクリューキャップではなく茶筒のように抜き差しできる構造とした。本体口部にはパッキンを設け、ガムが入った状態で上部だけを持っても蓋が抜けてしまわないように配慮している。
エステーも「消臭力」でLoop向けのパッケージを導入した。本体はガラス製だが、蓋はポリプロピレン、内キャップはポリエチレン。どちらも単一素材でリサイクルを行う。「いかにも消臭芳香剤だと思われるアイテムを、目に入るところに置いておくことに抵抗がある」という声もあることから、シンプルでインテリアを選ばないという点を意識し容器を開発した。
「近年、多くのメーカーが“より低いコストで軽い”パッケージを開発し、リユースしやすさ、リサイクルしやすさを犠牲にしてきたと思います。その状況を逆転させるのがLoopの取り組み。牛乳びんを用いた配達のシステムがそうであったように、容器の所有権を消費者からメーカーに戻す取り組みでもあります。これにより容器がメーカーの資産となり、さらに高い付加価値やデザイン性を持ったパッケージへの投資が可能になる。繰り返し使うからこそ容器のコストも抑えられる。そういう仕組みを構築できればと思います」(冨田氏)。
『ブレーン』2021年4月号
【特集1】
SDGsの達成へ クリエイターが考える持続可能な社会
・QDレーザ「With My Eyes」
・上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY
・NoMaDoS「slowz」
・ヤンセンファーマ「FACT FASHION」
・Innovation Design「KITCHEN MANE」
・I-ne/Botanist「共に生きる」ブランドキャンペーン
・豊島「FOOD TEXTILE」
・日本環境設計「BRING」
・Loop Japan「Loop」
・つながりをつくり社会課題の解決を目指す/高島太士(FIRST APARTMENT/NEW HERO)
・SDGsの達成へ「行動の10年」クリエイターに期待すること/根本かおる(国連広報センター 所長)
【特集2】
音声メディアに注目 どうなる?ラジオCMのクリエイティブ
・ヒット連発のクリエイターが集結 東西「ラジオCM談義」
・「ラジオCM制作実践講座」レポート
【青山デザイン会議】
3.11から10年 東北発、未来へ向かうクリエイティブ
・佐藤哲也(ヘルベチカデザイン)
・島田昌幸(ワンテーブル)
・長谷川琢也・安達日向子(フィッシャーマン・ジャパン)