コピーは人間である。—『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』に寄せて(元井康夫)

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『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、電通のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めた元井康夫さんが『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』を紹介します。

私は、著者の伊藤くんを彼が新入社員の時から知っています。

はじめは普通の青年でしたが、いつの間にかコピーの大家になっていました。

伊藤公一著『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。
2月16日発売 定価1760円

伊藤くんには二度ほど面倒な仕事を頼んだことがあります。ひとつは電通のクリエイティブの中堅社員に向けた「コピーゼミ」の講師、もうひとつは東京広告協会主催の「広告未来塾」の講師です。電通も、それを取り巻く広告業界全体も、今、大変な変革の中にいます。そこで働く人たちには新しい動きをどんどん学んでもらわなければなりません。そこでセミナーでは当然、データやデジタルクリエーティブなど先端領域の講師が並ぶことになります。しかしデジタルを知っていても人間を知らなければうまくゆかないのが広告です。そこで、伊藤くんに一講座登場願ったわけであります。

伊藤くんはクリエイター・オブ・ザイヤーに輝くエグゼクティブクリエイティブデイレクターでもあります。つまり、専門的に突出しながら全体を見ることもできるということです。専門とはコピー、全体とは人間です。

この本は、そのような伊藤くんの能力が遺憾無く発揮されている本です。

広告コピーを通して言葉について学びながら、さらにコミュニケーションや人間についても学ぶことができる本です。

例えば、彼は、コピーを人格として捉えています。色々な人がいるように色々な人格のコピーがあるといいます。その視点で古今の名作コピーの人格分析をしていますが、それが実に鮮やかで、面白おかしく読みながら、自然に人間についての理解を深めてゆくことができるのです。

時代が変わっても変わることがない、生きているコピーの本質について学ぶには最適な本であります。

元井康夫氏

1955年生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業後、電通入社。以後クリエイティブ領域でレナウン「ワンサカ」、ニッカウヰスキー「キャサリーン・バトル」、JAL沖縄「米米クラブ」、JR東海「そうだ 京都、行こう。」など、多数の制作に関わる。HONDA、花王、ユニクロ担当のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めた後、クリエイティブ担当役員を経て、常務執行役員、チーフ・クリエイティブ・オフィサーを務める。電通在職中、高野山にて四度加行を行じ、翌年真言宗の伝法灌頂を受け阿闍梨位を授かる。電通退職後は東京広告協会「広告未来塾」第2期塾長を務めたほか、仏像・女神像彫刻で個展を開くかたわら、著述活動をしている。著書に『がんばらないという智恵』(辰巳出版)、『瞑想状態に入れる方法』(徳間書店)がある。

 

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