※月刊『宣伝会議』4月号(3月1日発売)では「移動・人流データから市場が見つかる新しい『消費』、新しい『商圏』。」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。
外出自粛で見えてきた、生活者の底堅い“移動欲”
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中で移動が制約されるという未曾有の事態を引き起こしました。過去を振り返っても感染症の流行が歴史の転換期になっていることから、今回も社会を変え、そしてマーケティングを変えていくことになるかもしれません。「移動」はその変化の中心にあります。
実は日本はコロナより前から緩やかな「移動減少社会」に入っています。
国土交通省の調査からも外出率は漸減傾向にありました。その最大の要因は社会のデジタルシフト。自宅以外の場でしていたことをネットが代替することで、移動減少社会は進行していきます。コロナがこれに拍車をかけたことは言うまでもありません。
ただし世の中が移動減少社会へと大きく突き進むかと言えばそうとも限りません。コロナ禍の昨年9月に実施した調査では、月の平均移動回数はコロナ前と変わりませんでした。
生活者のお出かけ意欲を毎月聴取する調査でも、緊急事態宣言直後こそスコアは下落しましたが、すぐに回復しています【図表1】。
私たちは生活者の移動への欲求は底堅いと見ています。そしてコロナが落ち着いた暁には、外出自粛でマグマのように蓄積した“移動欲”がリバウンドで一気に噴出するのではないかと考えています。
“選択肢”になる移動。個人が自由にデザインする時代に
もっとも、コロナのインパクトは計りしれません。たとえ鎮静化しても移動の姿形は変容するでしょう。
例えばテレワークはコロナ後も定着することはまず間違いありません。
私たちの調べでは、コロナ禍で自宅周辺を探索し地元での生活を拡張する層、あるいは移動がハレとなることで寄り道が増えた層などが確認されていますが、これらは一時的な現象の可能性もあります。
一方で中長期的に進行する可能性が高いと考えるものに「移動の二極化」があります。端的に言えば移動する者/しない者とで生活者が二分される現象です。移動回数の上位/下位それぞれ10%の移動回数の格差がコロナ前の26倍からコロナ禍の調査で38倍に急拡大しました。
その背景は前述のデジタルシフトにコロナが掛け合わさることで移動が選択的なものになりつつあることが大きいと考えています。
移動が選択肢になる時代は、個人が移動を自由に編集し実行する、言わば「移動デザイン時代」。無駄な移動が淘汰される一方で、個人の価値判断で選択される意味的な移動の比率が高まると見ています。そうした移動は生活者の価値観そのものでもあります。移動は今後、行動ターゲティングであると同時に価値観ターゲティングとも捉えられるのではないでしょうか。
—本記事の続きは月刊『宣伝会議』4月号(3月1日発売)に掲載しています。
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