口の中や息だけでなく“マスクの中の空間”に着目したガム「ACUO FOR MASK」(税抜184円)。不快な香りをよい香りの構成のひとつと捉え、不快な香りを感じにくくさせる香料技術「ハーモナージュ技術」を活用した商品で、1月からコンビニをはじめとする小売店で販売している。
メインターゲットは、マスク内のエチケットに特に関心がある20代~30代の女性。ガムの味からパッケージに至るまで、この層を意識して開発した。
「マスクの中の臭いが気になる」は8割以上
開発の背景にあったのは新型コロナウイルスの感染拡大。マーケティング部の山本賢一氏が、マスクの着用者が増えるなかで“口臭が気になってマスクに好きな香りをつける方もいる”という情報を耳にしたことがきっかけだった。山本氏は「食後のお口のエチケットとしてガムを噛むというニーズはすでにありましたので、それと同様に、マスク内の空間をより良くするためにガムを活用できないと考えました」と話す。
実際に2020年12月に同社が行った調査では、「マスクの中の臭いが気になる」と回答した人が8割以上となっている。
企画の原案ができたのが、第一次緊急事態宣言が発出されていた4月ごろのこと。街から人が消えるとともに、“ポケット菓子”と呼ばれる、携行しやすいガムやキャンディの売上は急落していた時期だ。国内ガム市場で約60%のシェアを握る最大手のロッテも大きな打撃を受け、新たな販売策を模索していたタイミングだった。
「口内」「息」から「マスク内の空間」へ
そこで山本氏は、商品開発を行う中央研究所の海老原京太氏に相談。結果、「ハーモナージュ技術」が応用できることが分かった。不快な香りを“良い香りの構成要素のひとつ”ととらえることで、不快な香りを感じにくくさせる技術だ。
海老原氏は「我々はガムで虫歯や口臭を予防するエチケットの研究を常に続けてきました。山本から“マスクの臭いの不快感の軽減”というアイデアを受けて、この技術のアウトプットに至りました」と明かす。商品化までの道のりは約半年。元々あった技術を応用したことで通常の商品よりも早く開発できた。
マスク生活においては、「臭い」のほかにも課題があった。マスクをしながらメントール入りのガムを噛むと目がひりつく場合があることだ。これを解消するため、メントールがマスク内で広がりにくいようにと配慮した。
フレーバーはジャスミンを採用。海老原氏によると、ハーモナージュ技術に組み込むことのできるフレーバーは限られているが、ジャスミンには口臭と共通する不快な匂いの成分が含まれているため可能だった。また、ターゲット層を中心に飲料市場でジャスミン茶人気が高まっていたことも加味したという。