社外の技術で新しいモデルを作成…AI企業が近年取り組んでいる「オープン・イノベーション」とは?

ファッションデザイナー、起業家、インフルエンサーなどマルチに活躍するハヤカワ五味がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「マスメディアン 妄想の泉」。この番組では、さまざまなフィールドで活躍する起業家やクリエイター、アーティストをゲストに迎え、未来を面白くするヒントを“妄想しながら”探っていきます。2月27日(土)の放送は、前回に引き続き、エクサウィザーズ 代表取締役社長の石山洸(いしやま・こう)さんが登場しました。

(左から)石山洸さん、ハヤカワ五味

AI業界で進む「オープン・イノベーション」

エクサウィザーズは、「AI(人工知能)を用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をビジョンとして掲げ、2016年2月に設立。同社にはAIのエンジニアや研究者が多く在籍し、介護や医療、金融など、多様な事業領域にAIを活用したソリューションや自社サービスを提供しています。

昨今のAIビジネス市場に目を向けてみると、東京都にはAIのスタートアップが100社以上あるとも言われており、石山さんは「エクサウィザーズのように、どんな領域にもAIを活用している会社がある。その一方で、特定の領域でビジネスをしている会社がその分野でガンガンにAIを活用している。どちらかというと、汎用から特化型のほうへと段階的に移ってきている」と印象を語ります。

同社を設立以降、SDGs(持続可能な開発目標)の普及やESG(環境・社会・企業統治)投資のムーブメント、さらには成長と社会課題の解決の両立を目指すゼブラ企業がトレンドとなるなど、時代が変化していく現代。そのなかで「AI活用の領域特化の方向性も、いろいろな社会課題に挑戦する会社が増えてきている印象がある」と言います。

そして近年、自社だけでなく社外からの新たな技術やノウハウ、アイデアなどを取り入れることで、革新的なサービスやビジネスモデルを開発する「オープン・イノベーション」が進んでいます。

石山さんは、丸幸弘さんと尾原和啓さんによる共著『世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』(日経BP)を引き合いに、“ディープテック”というワードをポイントに挙げます。これはディープイシュー(根深い課題)をテクノロジーで解決していく取り組みのことで、「従来の各領域で培われてきたサイエンス(科学)と、AIのような新しいサイエンスを掛け合わせて課題解決していこうとする。そうなると、AI企業のオープン・イノベーションが増えるのは必然的なこと」と見解を示します。

eラーニングで広がる可能性

AI分野における人材の今後については「AIを学ぶためにかかる教育費用は、限りなくゼロに近づいてきている」と石山さん。最近では、無料でAIを学べる「eラーニング」(インターネットや電子機器を活用した学習)がたくさん存在し、オープンソースのライブラリもかなり増えてきていることから「一般的なソフトウェアエンジニアの人でも、ある程度のレベルのものであればかなり簡単に使える時代になってきている。そういう意味では(今後)普及していくのではないか」と推察します。

AIの分野に限った話ではなく、さまざまな分野がオンライン上で学ぶことができます。想起学習コンテンツが充実しているため、石山さんは「使った者勝ち」と話します。

また、「GDP(国内総生産)など、過去のディファクトスタンダード(事実上の標準)になっている指標を計算すると同時に、それ以外の付加価値も一緒に計算できるようになっている。経済的になんらかの予見を加えたときに、マクロ(俯瞰)に見て社会全体がどう変化するのか、といったことまでシミュレーションすることができる」と言います。

さらには、「その予測に“AIを活用する”ことも生まれてくる。そういう意味では、いろいろなeラーニングのコンテンツ同士を結びつけて、さらなるイノベーションを生むような形になると、さらに面白くなる」と可能性に言及します。

AIの進化がもたらすのは「多様な未来」?

ハヤカワが最近気になっているテーマとして挙げたのは“超高齢社会”。日本は2007年に65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超え、超高齢社会に突入しているだけに、「AIがどのように活用されているのか伺いたいです」とリクエスト。

石山さんは最近のムーブメントの1つとして、一般社団法人「みんなの認知症情報学会」を例に挙げます。この学会では、「AIの研究者が学会員になれるだけではなく、認知症の当事者の方も学会員となって一緒に研究している」と言います。

例えば、これまで料理をすることが生きがいだった人が、認知症を患ったとき。火の不始末などが怖いために料理ができなくなり“生きがいを奪われた”という人がいたそう。

そこで、「カメラの技術とスマートスピーカーの技術を使って、火を消し忘れていたら教えてくれたり、スマートキッチンのようなIoT(モノのインターネット)のセンサーを使って自動的に火を消してくれたり。そういったことができるようになると、認知症になっても安心して料理ができるようになる」と実例に触れつつ、「そういった形で、当事者を巻き込んだオープン・イノベーションが、超高齢社会のなかではすごく流行っていくのではないか」と期待を込めます。

2045年ころには、AIが人類の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると予想されています。石山さんいわく、シンギュラリティには“シングル”という意味合いも含まれているそう。しかし、台湾のIT担当大臣オードリー・タン氏は「シンギュラリティではなく、複数形の“プルラリティ”」と表現。またAI研究の権威でもあるトム・ミッチェル教授(米カーネギーメロン大学)は“マルチラリティ”と表現し、もっと多様な未来が待っていることを示唆していると紹介します。

「コンピュータサイエンスのなかでもいろいろな議論が巻き起こっていて、AIのライトネス(正しさ)の側面とリッチネス(豊かさ)の側面というのが、(活発に)議論され始めてきている」と話していました。

【この記事の放送回をpodcastで聴く】


<番組概要>
番組名:マスメディアン 妄想の泉
放送日時:毎週土曜 24:30~25:00
パーソナリティ:ハヤカワ五味
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/mousou/
番組Twitter: @mousou_tfm


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