東北6県でドラッグストアを展開する薬王堂は3月15日、事前に注文した商品を駐車場で受け取れるサービスを開始した。主導する薬王堂DX推進室マネージャーの西郷泰広氏は、「顧客体験(CX)と、従業員体験(EX)の間を取り持つサービス」と話す。
薬王堂では、専用のスマートフォンアプリ「P!ck and(ピックアンド)」を用いて商品を注文し、「車上受取」「レジ受取」のいずれかを選択する。スタッフが来店までに商品を集めておき、「車上受取」の場合は店舗駐車場まで届ける。店頭に赴いてレジで受け取ることも可能。「車上受取」は1注文につき220円(税込)のサービス利用料がかかる。また、医薬品は店内でのみ受け渡しとなる。
3月12日に試験的に実施したところ、10件以上の利用があった。「こんなに簡単に買い物を済ませられるなら、店から離れられなくなるという感想をいただいた」と西郷氏は手応えを話す。
3月15日から「岩手矢巾店」「盛岡向中野店」「紫波日詰店」「滝沢室小路店」の4店舗で対応する。2021年内に全322店舗(3月15日時点)へ展開する。数年後、1店舗あたり1日に6人~8人ほどの利用が目標で、売り上げの約3%ほどを占める見込み。
免許を返納する高齢者が増えることを踏まえ、2022年には自宅配送もスタートする計画。配送方法はPALTACの物流網を活用することを含めて検討する。
買うものが固定化する?メーカーの巻き込みも視野
「購買行動は、おそらくeコマースとも違い、より店頭購入に近い利用になるのではないか。商品の受け渡しは注文から最短2時間でできるため、利用頻度も高いことを期待している」と西郷氏は話す。
一方、アプリで注文する商品を選んでいく方式のため、すでに知っている商品に偏ってしまったり、ユーザーが個別に作成できる『お気に入りリスト』からリピート購入したりと、購入商品の固定化が起きる可能性はある。
「利用状況を見ながらではあるが、新鮮な売り場になることを意識したい。まだ決定している計画はないが、新しい商品について知る機会を設けたり、あるいは化粧品などでは、スマートフォン搭載のカメラを用いて肌をチェックし、商品を提案するということもできるかもしれない。メーカーを巻き込んだ取り組みもできるはず」(西郷氏)
インナーコミュニケーションとしての役割も
薬王堂は2017年にオリジナルの電子マネー「WA!CA(ワイカ)」を導入。その後も、無人レジの開発や、店頭で血液を採取して健康チェックができるサービスを提供し、健康データと消費行動の分析を行うなど、テクノロジーを取り入れることに積極的な企業だ。
「当社の取り組みは、実は外部の方々のほうがよくご存知。一方で、社内の人間があまり知らず、それがもったいない。スピード感を持って先進的な取り組みをする企業であることを示す上で、『P!ck and(ピックアンド)』にはインナーコミュニケーションの側面もある。実際、今回のサービスを店舗のスタッフに説明したときも好評だった。お客さまに便利に使っていただければ、さらにスタッフのモチベーション向上につながる」(西郷氏)