カンボジア市場に向けた仕事 クメール語への翻訳以外に注意したことは?
昨年、私たちdoqグループでは、カンボジア市場におけるJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の認知拡大と受験者増を目的に、現地のクメール語に対応した情報サイト「TOBIRA」を立ち上げの事業を受託しました。
JFT-Basicとは、主に就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、日常生活に支障がない語学力があるかどうかを判定するための試験です。少子高齢化社会が進む日本では、外国人労働者は今後ますますニーズが高まると予想され、日本での就労に関心を持ってもらうことや、日本語語学習者をいかに増やすかが課題となっています。
就労目的の在留外国人は、中国や韓国、フィリピン、ベトナムが多いのですが、カンボジアはまだまだ少なく、アジア諸国の中でポテンシャルを秘めている国だと考えています。
そこで私たちは、国際交流基金の方々と共に、JFT-Basicの試験内容や、渡航のために必要なビザ取得の一連の流れ、日本語を勉強するための教科書を、カンボジアの公用語であるクメール語にすべて翻訳し、情報を一箇所に集約したWebサイト「TOBIRA」を立ち上げました。
「TOBIRA」を制作するにあたり、クメール語に対応する以外に配慮したポイントが2点あります。
まず1点目は、前述したカラーコントロールです。
カンボジアでは曜日に色(日曜:赤、月曜:濃い黄色、火曜:紫、水曜:黄緑、木曜:緑、金曜:青、土曜:濃い紫)があり、該当する曜日に、関連する色を肌身に着けることで幸運や成功、健康がもたらされるという古くからの考えがあります。サイト全体のカラートーンを決める上で、この7色のどれかを使おうと思いました。
カンボジア国内で公開されている現地の他社サイトを色々巡ってみると、青、赤、黄色の3色がよく採用されていることに気づきました(曜日の色にも含まれています)。そこで、この3色でそれぞれデザインのパターンを開発し、最終的に青をベースとして、黄色を随所でアクセントとして使う方向になりました。
2点目は識字率に配慮して、テキスト要素を大幅に削減したことです。
カンボジアは周辺諸国と比較して、教育普及率が低いとされています。1970年代のポル・ポト政権時代に、極左政策のもとで学校が廃止されたことによる後遺症と、農村部で、子供が貴重な労働力となっていることが要因として挙げられます。カンボジア現地に住んでいる方から話を伺っていても、その影響は感じました。
JFT-Basicの試験の仕組みや、ビザ取得に関する情報は、詳細まで述べていくとキリがないため、まずはカンボジア現地の人々に、試験の存在と興味関心を抱いてもらうことに主眼を置き、重要な情報以外はなるべくカットする作業を行いました。
ローンチ後は、カンボジア国内で大きな反響があり、政府関係機関や教育機関など各所から問い合わせをいただきました。将来的には、TOBIRAのプラットフォーム上で日本語学習をスムーズに行えるeラーニングのような仕組みや、日本語を教える教師側と、学習者側がやり取りできるコミュニティ機能を実装していきたいと考えています。
単純に現地の言葉に翻訳するだけではなく、現地特性に合わせてWebサイトの情報構成やデザインを最適化していくことの重要性がお分かりいただけたかと思います。