ブランドイメージを客観視点で「見える化」
ブランド・ジャパン(BJ)は、企業・商品・サービス1500ブランドを6万人以上の消費者とビジネス・パーソンが評価する、日本最大級のブランド価値評価調査。2021年度版からは新しくSDGsに関する項目も追加され、より幅広い視点でブランド力の評価を確認することができる。
日経BPコンサルティングの新井徹氏は「頭の中にある“ブランドというイメージ”を可視化、数値化してKPIとして設定できる、ブランド戦略立案の強い味方です。評価軸はデービッド・A・アーカー氏をはじめとしたブランド理論の第一人者らが開発した客観指標。20年間変わらず続く“確かなものさし”を使えば、ブランドづくりの論点が明解になります」と説明する。
現在、BJには53業種のブランドがノミネートされている。新井氏は「導入企業はBtoC企業が中心ですが、ここ数年BtoB企業の導入も増えています。ブランドに対する関心がBtoB企業にも広がっていることを反映しているのでは」と指摘。また、導入する担当部署は、広報・コーポレートコミュニケーション、経営企画などに加え、近年は人事やマーケティングなどにも広がりを見せているという。
自社のブランディングを行う際は、まずブランド評価を客観的に把握することが第一歩だ。そして、自社の目指すブランドと一般生活者やビジネス・パーソンが思い描くブランドイメージの差分を可視化し、そのギャップを埋めていくことが求められる。
新井氏は「BJは、ブランドイメージを可視化・数値化して現時点のポジションを把握するだけではなく、ブランディング施策が効果を発揮しているかどうか、年に1度定点チェックしていく指標としても役立ちます。これからブランディングに本格的に取り組もうとしている企業にとっても、継続的にブランディングを行っている企業にとっても、客観的な指標として役立てていただけるツールです」と述べた。
<CASE 1:アマゾンジャパン>
データドリブンの議論にブランド・ジャパンの調査は必須
パブリック・リレーションズ本部 本部長
金子みどり氏
日本で生まれ育ち、16歳の時に単身で渡米。州立ミシガン大学を卒業後帰国。25年あまり、グローバル企業におけるコミュニケーション分野でキャリアを積む。オグルヴィ(広告)、ネスレ(飲料・食品)、シティバンク(金融)、GE(医療・コングロマリット)そして現在のAmazonと業界は多岐にわたる。2002年からは米国ペンシルバニア州立テンプル大学日本校の理事に就任し、2009年からは理事会会長を務めている。
—2020年度にブランド・ジャパン(以下BJ)のStandardバージョンと報告会パッケージを利用されました。この調査を活用されたお客さまは、社名変更など大きな変化があった前後のブランド認知状況をチェックしたいといった動機がありますが、アマゾンジャパンにも何か変化があったのでしょうか。
特に何か変化があったわけではありません。私の統括しているパブリック・リレーションズ本部では、以前からBJは大事な指標の1つとして参考にしています。昨年アマゾンジャパンが20周年を迎えたこともあり、これを機にもう少し深掘りして分析したいと考えました。
—分析結果と感じていたことにギャップはありましたか。
ギャップはありませんでした。Amazon自体の調査もありますし、分析結果の多くはもともと分かっていたことでサプライズはありませんが、異なる観点でデータの裏付けがほしかったのです。
社内でAmazon のブランドのあり方についていろいろな議論をしていますが、その中で「ヒューマナイズAmazon」を強調していこうと以前から話し合っていました。日本にも8500人の社員がおり、物流拠点も全国に21カ所あります。なので、人の顔が見えるブランディングが大切ですね。その必要性が改めてBJのデータで裏打ちされたことに意味があるのです。
当社の議論はデータドリブンで、充分なエビデンスがない感情論のぶつけ合いをしません。とはいえ、データ自体が回答ではない。しっかりとした議論を重ねる社風で、会議でもデータをみんなで読み取り、どんなアクションを取るべきか、徹底的に話し合います。
BJは1500ものブランドに対して6万人以上もの調査対象がおり、それらをベンチマークとすることでAmazonのポジションがよく分かります。また、調査項目が理論的に組み立てられていることも大きな価値です。普段、私たちが考えていることを実証できたのはBJのおかげです。