【調査背景】
生活者起点のリサーチ&マーケティングを支援しているネオマーケティングは、「D2C」に関するアンケート調査を実施し、生活者起点で求められるD2Cのあり方について調査しました。
今やベンチャー企業だけでなく大企業、中小企業まで取り組む「D2C」。ブランド独自のストーリーや世界観をそのままに生活者とコミュニケーションを行うことができ、消費者の購買データの全てを取得できるという大きなメリットがあります。
D2Cにはこういったメリットがあり、かつ今の生活者(特にミレニアム世代以降)に求められているあり方だという前提はありつつも、昨今のD2Cを巡る議論はブランド側の立場から論じられることが多いように見受けられます。
そこで今回は、生活者が求めているオンラインショッピング体験や購買行動の実態を把握し、より“良い”D2Cの形を模索するための調査を実施しました。
調査は、ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」の登録モニターの中で、オンラインショッピングを普段している方に対して実施しており、本記事は以下の2つの期間に実施した調査結果をもとに作成しています。
【調査概要】
●第1回調査
期間:2020年10月22日(木)~2020年10月26日(月)
調査対象:今まで、一度でもメーカー直販の通販サイトで何かを購入したことがある方で、半年に1回はオンラインショッピングをする方
第2回調査
期間:2021年1月27日(水)~2021年1月29日(金)
調査対象:メーカー直販の通販サイトとモール型ECサイトで何かを購入したことがある方で、半年に1回はオンラインショッピングをする方
<調査結果の全てはコチラからダウンロードいただけます>
●メーカー直販での購入経験:約4割
まず、オンライン通販で商品を購入したことがある人の中で、どの程度の人がメーカー直販のECサイトで購入しているかを伺ったところ、約4割という結果になりました。
メーカー直販のECサイトで購入している方の割合は、男性よりも女性の方が高い傾向があります。
また、メーカー直販のECサイトで購入している男性の割合について、20代以下・30代よりも50代・60代以上の方が高い、ということがわかります。
●なぜメーカー直販で購入するのか
なぜ生活者はメーカー直販のECサイトを利用しているのでしょうか。
その理由を聞いたところ、「信頼感があるから」と回答した方が最も多く、次いで「そのブランドが好きだから」と回答した方が多い、という結果になりました。
オンラインショッピングでは、購入する商品を実際に確認することができないなど、実店舗でのショッピングよりも生活者の不安感は高まります。ブランド公式のサイトで購入するという信頼感が、そういった生活者の不安を少しでも解消しているのかもしれません。
●ファンであれば、メーカー直販で購入したい方が6割弱
昨今、商品やブランドの「ファン」も注目を集めるキーワードではないでしょうか。
商品やブランドのファンであれば、半数以上がモール型ECサイトではなくブランドのECサイトで購入すると回答しています。
モール型ECサイトと価格差がないことも条件になりそうですが、このことはブランドにとって顧客を自社で抱え込む大きなチャンスがあることを示しています。
また、理由については「アフターケアや保証がしっかりしていそうだから」「サポートが手厚そうだから」等、ブランドからのアフターサービスについて期待する意見も多数見受けられました。
自由記述で回答いただいた内容を一部抜粋して紹介します。
【一部抜粋】
・直販の方が店頭で買い物した感覚があり満足感があるから
・直販の方がトラブルが起きた時の対応が良さそうだから
・アフターケアや保証がしっかりしていそうだから
・サポートが手厚そうだから
・公式の方が梱包などにお店のカラーが出て好きだから。
・○○円以上買うとギフトが貰えたり、サンプルが貰えたりしてお得だから
・同じ商品なら安価な方が良いが、できるだけ直販で購入して売り上げに貢献したい
・企業を少しでも応援したい
・直販の方が正規品感があって安心して買えそうな気がするから
●生活者はシビア。選ばれるブランドの基準は「信頼感」にある。
D2Cの文脈では、ブランドの世界観・ストーリー、企業の社会貢献の姿勢に共感して生活者はブランドを選ぶ、ということが言われています。
しかし、ブランドの世界観やストーリーさえあれば生活者に支持される、というわけではないようです。
生活者がブランドを選択する際には、商品・サービスの品質、そして価格と品質のバランス、そして何より信頼できることがブランド選択の基準として挙げられています。
まずはブランドとして信頼できるかどうか、そして自分向けの優れた商品・サービスを提供してくれるか、ということを生活者はシビアに判断しているということです。
●期待と現実のギャップ ~サポートへの改善要望が多い~
メーカー直販サイトへの不満や改善要望を見ていくことで、どのような購買体験を生活者がブランド側に求めているか伺うことができます。
メーカー直販サイトでのショッピングについて改善要望を聞いたところ、サポート体制を充実させてほしいという声や、直販サイトの利便性について改善を求める声が多く集まりました。
メーカー直販ならではのケア・サポート面を期待する方が多いにも関わらず、実際は期待していたほどのサポートが受けられず、期待が裏切られているケースがあるということでしょう。
改善要望について、自由記述で回答いただいた内容を一部抜粋して紹介します。
【一部抜粋】
・修理依頼、交換返品が面倒。売りっぱなしの感が強い
・不具合品の返品対応 不具合発生時の保証を手厚くしてほしい
・どんな些細なことでも質問したら必ずその日のうちに回答してほしい
・発送時など、タイミングごとにこまめに連絡がほしい
・問い合わせ先が明記されておらず、聞きたいこともすぐ聞けないし、トラブルがあった時などもすぐ連絡ができず困る
・商品情報をもっと分かりやすくして欲しい
・在庫がない場合でも検索すると出てくるときがあるので、在庫なしで入荷も見込みがない場合は検索結果に表示しないでほしい
まとめ
D2Cに取り組むうえでブランドの世界観やストーリーに共感してもらうことも必要ですが、ブランドはあらゆる顧客接点によって構築される、という大前提があります。
顧客から支持されるブランドとなるには、まずはその顧客に確かな価値を提供する商品・サービスを提供すること、商品・サービスを魅力的に伝えるコミュニケーションや、顧客に寄り添い信頼感を与えるようなサポートを実施すること、などを統合的に考える必要があるといえます。
ブランドの世界観やストーリーは、その上で顧客に購入する理由を与えるものです。
生活者の心理として、世の中に悪影響をもたらす商品を購入したいとは思わないでしょうし、サステナブルな商品であれば、そのようなブランドに共感し、購入を後押しする要素にもなります。
また、そういうブランドを利用しているという自分自身への肯定感、自己表現という側面も相まって、ブランドとの心理的な距離はますます近くなっていくでしょう。
これらはD2Cに限らず、顧客に支持されるブランドとなるための必須要件だといえるでしょう。
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