CS放送における広告も成果報酬型に対応
CSスポーツチャンネル「GAORASPORTS」は、日本プロ野球の阪神タイガース戦・北海道日本ハムファイターズ戦をはじめ、男子テニスATPツアー、モータースポーツ(インディカー・シリーズ)、プロレス・格闘技、バレーボール、ゴルフなど、国内外のスポーツ、『よしもと新喜劇』などバラエティ番組も放送している。
特に1990年の開局以来、阪神タイガースは30年、北海道日本ハムファイターズは22年の放送実績があり、多くのファンが視聴している。「2020年のシーズンは生中継で、1試合あたり推計約95万インプレッション(imp)を獲得しました。全80試合の累計でいうと7690万impにも上ります」と話すのは、GAORAメディアビジネス部 マネージャー三井秀樹氏だ。
同社がCS放送というメディアでありながら、このようにインプレッションを指標とし、可視化していることには理由がある。それは「時代の変化に伴い、CSにおける広告を見直し、価値を高めていく」ためだ。
「毎年デジタルにおける広告費が拡大し、発展する中で、マスメディアが行ってきた従来のような広告枠の売り方は通用しなくなってきています。広告の成果に責任を持たない売り方ではなく、『インプレッションなどの視聴実績に応じた対価として広告費をいただく』いわゆる成果報酬型のデジタル広告のような広告取引を、CSの広告枠においても、試みるべきと考えています。地上波のテレビCMでも運用型広告が始まっている中で、CSチャンネルも対応し、広告主側に価値を提供できなければ、取り残されてしまいます」。
4月からの新調査の活用でデジタルとの比較が可能に
今年4月からは「テレビ接触率 全国ペイテレビ調査」というCS / BSペイテレビの新調査が開始になった。取得できるデータの量、質とともに高まったため、視聴者の属性分析や視聴実績の可視化などがより具体的に可能になる。
「まずは本調査を活用することによって、広告主がデジタル動画広告とCS広告を比較・検討できるようにしたいと考えています。デジタル広告と同じ指標で比較できるようになれば、なぜ『GAORA SPORTS』を選ぶのかという、チャンネルの強みも生み出し、訴求することができます。現在『GAORA SPORTS』の視聴者は、40歳以上が約8割とM2、M3、F3層が中心です。さらに一戸建て持家の所有者やマイカー所有者の割合が高く、購買力の高いユーザーが多いことが特徴です。新調査の活用で、このような属性をより深掘りして、分析、可視化していきます」。
ターゲットが明確になれば、ターゲットを絞り込んで広告を出稿する場合、インプレッション単価(CPM)を高く設定することや、逆にターゲットを絞らないことで単価を下げるなど、個別に価格設定を変えていくことも可能になる。
「新しい広告取引の形を実現していくためにも、まずは当チャンネルでもファンが多く、impを多く獲得できるコンテンツである“プロ野球中継”の広告枠で、1試合あたり30秒1枠限定で始めていきます。このような価格体系も含めて2021年はチャレンジの年にしたいと考えています」。
CSの価値を活かした広告商品の開発にも注力
価格体系の設定以外にも同社が注力している取り組みのひとつが、CSチャンネルというメディアの既存の強みを活かした広告商品の開発だ。
もともと、本チャンネルでは、地上波民間放送と比較して、安価で300秒の長尺のCMを流せたり、延長戦に入り注目度が高いときに送出される“延長CM”の設定、ファイターズ戦は加えて、ファイターズ勝利時にのみ送出する“勝利CM”という試みを行ってきた。三井氏は「このようなCSならではの自由度の高さを活かした商品開発も、広告主企業や広告会社のニーズに応えながら進めていく」と話す。
「今後はデジタル動画広告と比較される世界になった場合にも、CSならではの強みを活かし、価値を提供していきます。テレビCMゆえ、CMが放送される番組が予め分かっており、“ブランドセーフティ”や“ビューアビリティ”の担保、決まった枠で流れ、コンテンツを妨げることのない“アドエクスペリエンス”などがあります」。
2021年は、CSチャンネルにおける広告商品、広告取引の在り方など、CS広告の価値が改めて見直されるきっかけとなりそうだ。
「当社の取り組みは、広告枠の価値を成果ベースで決めてしまうため、さまざまな意見があると思います。しかし、毎年のように広告費の最適化が求められる広告主企業から、見向きもされない状態になってしまっては元も子もありません。デジタルだけではなく、地上波のテレビCMなどマスメディアも時代に合わせて進化している中で、CSも過渡期にあると思います。このような新調査という変革のきっかけを逃さずに、新しい価値を生み出していきます」。
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