「テレビとネット」の変化は単純に世代論で語れない!
私は長らく「テレビとネット」の変化について考えてきたのですが、そこを考える重大なヒントが上のグラフにはある。単純に世代論で語りにくかったのが、明解に示してもらえたように思います。
例えば「テレビのリーチ力はすごいから若い世代にも結局は影響力がある」と言われるのは若い層にマスメディア型もそこそこいるからであって、CL2,3へのリーチは薄いかもしれない。CL5には、そもそもECサイト以外のメディアは効かない気さえします。
先述の「5:1」が「4:1」に迫った件も、人口の多い50代60代を中心にCL1,4,6が相変わらず放送を中心に視聴しているからで、ソーシャルツイン型やオルタナコミュニティ型はすっかり配信中心のテレビ視聴なのかもしれません。若い層はYouTubeやNetflixの話題で盛り上がっているし、「鬼滅の刃」もほぼ全てのSVODサービスで配信されていたのが映画のヒットにつながったと言われます。
あるいは最近、テレビ局は「ファミリーコア層」を戦略ターゲットにして59歳以下もしくは49歳以下を狙っていると言われています。第7世代と呼ばれる若いお笑いタレントがその層にはいいらしいとなると、どの番組もぺこぱや霜降り明星、四千頭身とハナコを起用する。顔ぶれは変わったけどまた新たな面々の金太郎飴になっていて、それでつかめるのは主に30代40代の「気晴らし型」であって、若い層に多いソーシャルツインやオルタナコミュニティ型は振り向いてもくれてないんじゃないか。
そして、いま私たちがメディアと人々の関係で考えなきゃいけないことが、このグラフから見えてくると思うんです。たぶん20年前にこの分類をすると、当然マスメディア型のクラスターしかいなかったと思います。このままの分類を使うと、若い世代を中心に「民放で気晴らし型」が多く、年配になる程「古き佳きマスメディア型」になっていた。くだらないバラエティを前者が喜んで見てるのを、真面目な後者は「けしからん」と怒る、そんな構図だったはずです。
若い世代の大半が「気晴らし型」なので「笑い方」をテレビが決めていた。それが当時の人びとの「文化」になっていた。でもそれはいまどうなんでしょう。そもそもバラエティを見ない人びとが若い世代を中心に増えているんです。
「気晴らし型」が体勢を占めていた中で、文化が築かれてきて、その文化がいまも通用すると思い込んでいた。テレビが王様の時代は実際そうだった。でもいまはテレビを王様どころかそもそも触れないで暮らしている人がどんどん増えている。そんな中で「テレビ王朝時代」の感覚が通用しなくなっているんじゃないか。でも小さくなったテレビ王国に住んでいると、そのギャップに気づかない。政治的ではなく文化的な意味での「分断」が実はいま、発生している。