2021年に設立15周年を迎えるrhizomatiks(ライゾマティクス)の個展「ライゾマティクス_マルティプレックス」が、東京都現代美術館で始まった。
2006年、「新しい領域を切り開き世界をより面白くする」という使命感と野望のもと、齋藤精一氏、真鍋大度氏、千葉秀憲氏が設立したライゾマティクス(以下、ライゾマ)。以降、インタラクティブアートを通じて情報表示の新たな形態や、人と人、人と機械の新たなコミュニケーションを提案してきた。今年1月には社名をアブストラクトエンジンに変更し、大きな組織変更を図っている。
そんなライゾマの知見は、いわゆる「メディアアート」の領域を超えて、データの視覚デザインなどの研究開発的要素や、建築、デザイン、広告やエンターテイメントなどのビジネスにまで展開。近年は世界的に活躍するアーティストであるビョーク、スクエアプッシャー、Perfume、ELEVENPLAY、狂言師・野村萬斎や研究者らとのコラボレーションに加え、多様な視覚化や問題提起型のプロジェクトを通して、技術と表現の新しい可能性を追求してきた。
美術館での大規模個展では初となる本展では、ライゾマティクスの領域横断的な創造のアーカイブを網羅するとともに、新作プロジェクトを公開する。
新作の一つ、『Rhizomatiks × ELEVENPLAY “multiplex”』は、ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」のダンサーの動きをモーションデータ化し、映像プロジェクションや動くロボティクスとともに構成したインスタレーション作品。高さ約7メートル、全長約27メートルの空間にパナソニックのDLP®方式 SOLID SHINEレーザープロジェクター15台を使用しマッピングすることで、没入感のある空間を演出している。
過去の代表作としては、2011年に発表し国内外で多数受賞し評価された『particles』を本展に合わせアップデート。東京都現代美術館の地下2階から地上3階までの吹き抜けの空間を使用し、高さ8メートルある有機的な螺旋構造のレールに多数のボールが転がり、空中に浮かぶ光の点滅が幻影的な残像を生み出している。
また、新作は東京都現代美術館の会場(=オフライン)に加え、オンライン会場でも見ることができる。オンライン会場では、東京都現代美術館の空間を3Dモデルで再現し、鑑賞者が会場をウォークスルーしていくという擬似体験を可能にしている。同時に、美術館内にいる観客の位置情報をビジュアリゼーションし、オンラインとオフラインの鑑賞をクロスオーバーさせていくという。本展のオンライン会場は、3月30日よりこちら(https://mot.rhizomatiks.com/)で見ることができる。
ポスト・コロナの社会において、世界全体でオンライン化を求められ、人間としてのコミュニケーションのあり方についての新しい可能性が問われるなか、多くのプロジェクトや技術提案を実践してきたライゾマ。その実験的、野心的なアウトプットを通じて、変化し続ける世界における「新しいアーティストの役割」を呈示する試みとなる。
ライゾマティクス_マルティプレックス
会場:東京都現代美術館
会期:開催中、6月20日(日)まで。
休館日:月曜日(5月3日は開館)、5月6日
開館時間:10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般 1,500円、大学生・専門学校生・65歳以上 900円、中高生 500円、小学生以下無料