オーセンティックな音を提案
小学生のころに日本からLAへ移り住み、10代からプロのアーティストを目指し音楽活動を続けていたBlack Cat White CatMusicの2人。やがて広告や映画の領域で音楽制作に携わるようになり、姉のアスカマツミヤさんが会社を立ち上げたのが現在の事業の始まりだ。弟の松宮聖也さんもボストンのバークリー音楽院を卒業後、LAで作曲家として活動。現地で映像音楽プロデューサーとしてのキャリアもスタートさせ、エミー賞をはじめとする数々の賞を受賞するなどの活躍後、日本に帰国し2018年にBlack Cat White Cat Musicを立ち上げた。
同年にはTBWA\HAKUHODOと音楽パートナー契約を結び、同社案件を含め多数の日本企業のテレビCMの楽曲制作やライセンシングに携わってきた。多くが絵コンテまたは企画の段階で相談があり、海外の楽曲を中心にサンプルを集めて提示。クリエイターが映像で表現したい世界観を広げていく役割を担う。
「LAには世界中から音楽のトレンドが集まってくるので、流行の音や最先端の音を提案できる。オーセンティックな音を求めるクリエイターや企業のニーズに応えることができます」(聖也さん)。
2人はLAを中心に欧米の音楽業界で多様なネットワークを持ち、カニエ・ウェストやブルーノ・マーズら著名なアーティストを手がけるプロデューサーのほか、新進気鋭の若手ミュージシャンとの接点も多い。
最近では、音楽を担当したアウディのCM「Electric Wave」で、ベルリンの広告祭「CICLOPE2020」のオリジナル音楽部門でゴールド賞、Music Company of the Yearを受賞するなど実績を重ねている。
映像が求めている音楽を考える
グローバルで活躍する2人だが、広告における音楽の役割について、どのように考えているのか。アスカさんは「音楽は映像の一部。映像にマッチした内容を提供して、世界観を広げていくことができるのは音楽の力」と語る。
聖也さんも「音楽は映像が持つ感情を引き出すことができる」と説明する。「たとえば歯磨き粉のCMだったら、映像とともに“歯がきれいになって気持ちがいい”という感覚をより伝わるようにするのが音楽の役割。映像に対する感情を強調していくので、音楽でありながら映像の仕事をしている感覚です。この映像が求めている音楽は何なのか、を常に考えています」。
近年は映画作品の仕事も増えている。2019年のベルリン国際映画祭でパノラマ部門観客賞と国際アートシネマ連盟賞を受賞した日米合作映画『37 セカンズ』(2020年2月日本公開)では、聖也さんが日本人監督のHIKARI さんとハリウッドで知り合った縁から、アスカさんが音楽を担当。聖也さんも日本のアーティストの楽曲を含めライセンシング仲介に関わった。このほか、坂本龍一さんが参加する長編映画『After Yang』、NION オリジナル短編作品『ZENON』(監督:関根光才)などの楽曲制作にも携わっている。
世界の音楽をもっと日本の広告へ
アメリカのみならず欧州へのネットワークもある。その縁を活かして、P&G「ファブリーズ ナチュリス」のテレビCM(2020年12月公開)ではフィンランドのアーティスト「Eva & Manu」の起用を提案した。
「浮遊感のある映像に、日本では耳なじみのないフィンランド語の楽曲が不思議な感覚を後押しできたのではと思います」(聖也さん)。このほか最近の国内テレビCMの音楽プロデュースの実績としては、日産自動車「NOTE」、ウイングアーク1stなどが挙げられる。
今後は海外や日本のインディーズ音源の発信など、今まで以上に世界の音楽を日本の広告に、そして日本の音楽を世界の作品に取り入れる橋渡しをしていきたいと考える。アスカさん個人としては、「映画の仕事の拡充はもちろん、メディアアートの音楽制作などにも興味がある」とのこと。
「すでに海外のレーベルと協力し世界中の楽曲を広く提供していくような状況をつくっているところです。リモートで制作もできますし、言語の壁を気にせず交渉できるのが僕らの強み。日本発で、今までと違う映像表現や音楽を試してみたいというクリエイターの皆さんに、新たな視点を提供していきたいです」(聖也さん)。
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