書籍『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(博報堂生活総合研究所 著)の発刊前スペシャルイベントが2月26日にオンラインで開催された(主催・天狼院書店)。本書は、生活者の欲求や変化を読み解く独自のビッグデータ分析手法とノウハウを公開する書籍だ。
当日は書籍を執筆した博報堂生活総合研究所 研究員の酒井崇匡氏を中心に、堀宏史氏、佐藤るみこ氏の3名が登壇し、書籍に書ききれなかったTIPSも含めて分析ノウハウを紹介したほか、その場での分析ライブ実演も行った。
「本書を執筆するにあたり、参考にした本のうちの1冊は『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』です」と冒頭で話した酒井氏。「この本は、面白いデータを紹介するだけではなく、どういう風にデータを生活の中や仕事の中、あるいは教養人として世の中を見るために使っていけばいいのかを解説した名著であり、私たちは今回、『デジノグラフィ』を書くにあたり、“ビッグデータ版の『ファクトフルネス』”を目指しました」と執筆にあたってのテーマを明かした。
イベントは1部「クイズでチェック、あなたの生活者観察眼」、2部「実演!体験!デジノグラフィ」、3部「詳説!生活総研の秘伝ノウハウ」の3部構成で行われた。以下にそのダイジェストを紹介する。
1部「クイズでチェック、あなたの生活者観察眼」
1部は、様々な研究事例をもとにしたクイズを通してデジノグラフィのポイントを紹介しつつ、参加者の生活者観察眼も研ぎ澄ませていこうというパート。
酒井さんは、「ビッグデータ」の3要素と言われている「ボリューム(多量)」「バラエティ(多様)」「ベロシティ(多更新)」をまず解説。「ビッグデータは“高解像度のデータ”と見ることができます。8ビットの大きなドットでカクカク動くデータとは違い、データの多量さで細部がクリアになり、データの多様さにより多角的、立体的な実像が浮かび上がります。さらに、高頻度でデータ更新されるため、時系列の動きも滑らかになるのです」。
細部がクリアに見えてくる例として紹介されたのが、「年齢のボーダーライン」についてのデータ。スマートニュースとの共同研究で、女性の年齢別に記事の閲覧率を調べると、ショートヘアに関する記事の閲覧率が30代後半から徐々に上昇してくることがわかったという。
「ショートヘアの関心が高まるということは、その頃に女性が『髪質の曲がり角』を迎えているということです。それはどの年齢なのか。答えは47歳です。年齢が上がるほどキューティクルが痛んでロングヘアが維持できなくなる。プロの美容師にも確認したところ、その通り、50代手前ですねと話していました。逆に言えば、この年齢を越えても綺麗なロングヘアをキープしてる方は、髪質が強いか、ちゃんとお手入れをされてる方だということです。美容師目線では、ずっとロングヘアをキープしている萬田久子さんはすごいんだそうです」
さらに、年齢が1歳刻みでわかるということは、同じ年齢という軸上で、いろいろな波形を重ねられるということでもある。次に出題されたのは、メルカリとの共同研究からのクイズだ。
「正解はBです。Aはドライブレコーダーで、Aの図を見てみると、購入者は40~50代、出品者は30代に固まっていることがわかります。つまり、この図を見ると、下の年齢の出品者から上の年齢の購入者に“逆のおさがり”のような形でモノが受け渡されていると見ることができます。一方で、実は今、フィルムカメラはZ世代と呼ばれる若者に人気で、全世代の出品者から買い占めている状況があり、ブームになっていることがわかる良い例です」
佐藤さんからは、ピンポイントな消費の盛り上がりがわかる事例が紹介された。
「オンライン家計簿サービス『Zaim』のデータを、12月23~24日の間に普段よりもどのくらい多くのお金を使うのか、という視点で調べてみると、一番お金を使うのは新潟県の人々だということがわかりました。
いったいなぜなのか。その背景を調べると、新潟県人の家族の食卓を大事にする文化が影響しているようです。例えば、仕事のあと同僚と飲んでも食事は家でとる人が多いそうで、クリスマスにも家族で食卓のごちそうを囲む人が多い。Zaimのデータにはスーパーなどのレシートをもとにしたデータが多く含まれているので、他の県に比べても消費が盛り上がっていることがデータとして現れた、と見ることができるのです。
そういう県民性もあってか、実は新潟県は日本で離婚率が最も低い県の一つなんです。」