LINE不祥事でメディアが「目安箱」を設置 企業はどう対応すべきか

マス・メディアの「目安箱」の問題点

今後、マス・メディアの「目安箱」設置は増加する可能性がある。SNSにより個人が声をあげる土壌はしっかり形成されているし、マス・メディアにとっても玉石混交の可能性はあるとしても多くの情報を収集すること、それ自体の有用性は否定できない。ただ、最後にその問題点にも触れておきたい。

先に指摘したとおり、該当企業の顧客の立場に立つと、内部通報であれ外部通報であれ問題が是正されればいずれでもよい。とはいえ企業は、外部ではなく内部通報によって、自浄作用を機能させ是正を図りたいと考えるはずである。

社内で問題事象に直面した社員が問題の是正を望むとき、どこに通報するのが一番実効性があり、かつ自らが不利益な扱いを受けることがないか、を考えることになる。

メディアには「情報源の秘匿」というルールがあり、また先の記者は「みなさまの身辺の安全は100%守ります」と書き込んでいるが、実際のところ、具体的にどのような安全確保の方策を想定しているのかは分からない。また、しっかりした内部通報制度が整備されている企業の社員が外部に通報すれば、保護要件を充たさないとして懲罰の対象となることもありうる。

マス・メディアの内部告発の呼びかけは、新たな企業不祥事の是正の手法となる可能性を秘めるものであるが、通報者の犠牲のもとで成り立つ情報収集は適切ではない。内部通報制度において通報者保護は重要課題であるが、それはマス・メディアへの内部告発においても同様である。

朝日新聞は「この問題についてメールに情報をお寄せください」と紙面に掲載したが、併せて「どのようにして、皆さまの身辺の安全を100%守るのか」も説明すべきではなかろうか。

森原憲司(もりはら・けんじ)
弁護士

1995年に弁護士登録(東京弁護士会所属)、虎門中央法律事務所入所。2000年9月からアフラック生命保険の企業内弁護士(法務部長)。2005年10月に森原憲司法律事務所開設。銀行・信用金庫・生命保険等の金融機関を中心とした企業法務を専門とする。近著に『内部通報制度調査担当者必携』(経済法令研究会)。

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