孤独なき社会へ 産後ドゥーラが母親を救う

遠い親戚より近くの他人。サポートの包囲網を

産後ドゥーラの最大の特徴は、病院で助産師や看護師から受ける医療的なケアとは異なり、“家庭内のケア”に重点が置かれていることだ。

例えば、おむつ替え、沐浴、寝かしつけなどの赤ちゃんの世話に、料理、掃除、洗濯といった家事全般。兄弟がいる場合は上の子の保育園の送迎をすることも。さらに、母親の話し相手も重要な仕事の一つだ。“赤ちゃんが泣き止まないけど、どうすればいいの?”といった日々生まれる疑問や不安に答えたり、何気ない会話を交わしたりすることで母親の気持ちは安定するという。

「新型コロナウイルスの影響から、里帰り出産を断念し、急遽自宅の近くの産院を探しなおしたり、立会い出産や面会ができないなど、当初の予定や本人の希望からかけ離れた出産を余儀なくされる母親も増えている。上の子の保育園が休園になったり、頼りにしていた実母が自宅に来られないなど、産後の体制も不安定になっていることから、必死の思いで産後ドゥーラを見つけて依頼される方が増えた」。

依頼が入ると、まずは母親と面会し、産後の生活のどこを重点的にサポートしてほしいかをまとめていく“産後プランニング”(有料)を行う。その後、各家庭の希望に合わせて自宅を訪問し、家事・育児を支援する。料金は地域やサポート内容などにより変動するが、1時間2500~3500円+交通費(実費)だ。

「私の仕事は、母親を心身共に休ませてあげること。他人だからこそ、お金を払っているからこそ、気兼ねなくお願いできることもあると思う。育児は一人でするものではない。頼れるものはなんでも頼って、サポートの包囲網を張って欲しい。」

塚原さんが作る料理。野菜中心の身体に優しいおかずが好評だ。

ドゥーラはもともと、アメリカで生まれた職業だ。アメリカでは、出産に立会うバースドゥーラと、産後のお世話をする産後ドゥーラの2通りのドゥーラが存在する。助産師との違いは医療行為を行わないことで、いずれも母親の精神的な支柱として地位を確立している。

かたや日本では、ドゥーラの存在がまだまだ浸透していないのが現状だ。ドゥーラ協会によると、産後ドゥーラとして開業する人は首都圏に多く、利用助成制度を取り入れる自治体や企業は首都圏を中心に少しずつ広がりをみせる。地方でも核家族化や祖父母世代の高齢化は進み、サポートの需要は高まっているものの、産後ドゥーラの有資格者は少なく、制度は道半ばだ。ドゥーラの認知度を上げて担い手を増やし、支援の輪を広げていくことがこれからの社会に求められている。

次ページ 「経営者から産後ドゥーラへ」へ続く

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