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「UXライター」になった日
私が「UXライター」になった時のことをお話しします。
ある時、スマホアプリのマーケティング支援を行う企業の求人を見つけました。アプリのダウンロードを促すSNS広告のプランニング、アプリサービス内のテキスト、プッシュ通知のクリエイティブ。これこそまさに、「UXライティングだ」と直感しました。
「スマホアプリのクリエイティブに関するコピーライター」と銘打っての募集でしたが、業務内容についての話し合いの際に念を押して伝えられたのが、「いわゆるキャッチーな言葉遣いが求められるコピーライティングとはちょっと趣が違う仕事であること」でした。私自身はその点を深く理解しているつもりでしたので、実際に業務に取り掛かった後も一切の違和感がありませんでした。
チームのメンバーの方からは「プランナー」や「ディレクター」などと呼ばれていましたが、名刺を作る際にどんな肩書きが良いか聞かれ「UXライターでお願いします」と伝えた時のきょとんとした顔が忘れられません。
当たり前といえば当たり前かもしれません。私が知る限りでは、2017年の時点では日本で「UXライター」という肩書きの人はいませんでした。アプリにおいて「言葉を置くだけ」の行為はやろうと思えば誰でもできてしまうので、わざわざそこに専門職をコミットさせるというのは簡単ではありません。スタートアップやベンチャー企業であれば、なるべくコストをかけたくないというのは自然な考えです。
しかし、多くのサービス運営者がサービスをスケールする上でのどこかの段階で、課題はデザインやエンジニアリングではないのかもしれないと気付き、UXライティングに投資することでコンバージョンが変わってくるという事実が明らかになってくるのではという確信がありました。
私はコピーライターになる前にはソーシャルメディアディレクターとして勤務していた経歴があります。企業のSNSアカウントの運用を専業として行ういわゆる「中の人」といわれる存在です。学生として就職活動をしていた時にはFacebookがまだ日本でのサービスを開始する前でしたので、コピーライターを目指していた自分がまさかSNS運用の仕事に就くとは想像さえできていません。
形は変われど、今後SNSが完全に世の中からなくなることは考えづらいので、おそらくSNS運用という仕事もこれから先になくなることはないのだと思います。UXライターも同様ではないでしょうか。これからも新しいアプリは生まれ続けるわけで、より多くに使ってもらい、そして使い続けてもらう上でUXライティングの需要はさらに高まっていくと思います。