大ヒットメーカーたちが15歳だった頃
中村:さて、番組にお便り届いています。ラジオネーム、レナちゃんさん、15歳(高1)。
「悩みです。最近生きる理由がないなと思っています。ほぼ同じルーティーンで、特に面白みもなく、ただ過ごしている気がします。私はドラマが好きで、将来音楽でご飯が食べられたらなと思っていますが、思っているだけであまり練習もしないし、勉強はクラス40人中35位です。変わればいいだけなのかもしれませんが、なんとなく、まあいいか、みたいな感じになってしまっています。喝をください」
澤本:喝がほしいのかな。でも、僕なんかそれを聞いていると、悩んでいるだけ立派だけどね。
中村:(笑)。
澤本:僕も、何となく何になりたいっていうのはあったけど、何していいのか分からなくて。ただ、“なりたいもの”は考えていた方がいいと思うんですよね。
中村:澤本さんは高1のとき、どんなことを思っていたんですか?
澤本:僕ね、すごく適当だったんですよ。なんとなく文化に関わっていきたいなって大きな野望はあって。
中村:うんうん。
澤本:その文化が何かとも、理解していなかったわけ。
中村:分かる。
澤本:ただ、その頃で言えば、『宝島』(宝島社)っていう雑誌を読んでいて。「ああ、こういうものがいいな」とか……。ラジオ聞いて「ラジオいいな」「人の心と関わるものになっていきたいな」って気持ちはあったけど、それが具体的に何かはさっぱり分からなかったんだよね。
でも、高3のときに受験勉強が嫌で映画館に行って、森田芳光の『家族ゲーム』っていう映画を観て、「あっ、これだ」と。「俺はこういうものをやりたい」と勘違いをし、『時をかける少女』という原田知世のアイドル映画を観て、「やっぱりこっちだったな」って思い直し(笑)。
でも、そういうのも含めて、映像で何かやりたいなって思ったのは、その前から何かしら悶々としていたものの結論がそこで出たという感じがあって。でも、間違えていたのは映画って2時間くらいあるから……僕、集中力すごくないんです。
中村:(笑)。
澤本:集中力短くてもできるのは、たぶんCMじゃないかって勘違いして、大学受ける時にCM制作ができそうなところで受けたんだけど……。まあ、大きく言えばカッコつけたかったんだよね。あとは高2のとき、一瞬だけ経済学部に行きたくなって。
中村:あっ、そうなんですか?
澤本:そうそう。理由はNHKでやっていた、香港の為替ディーラーのドキュメンタリーがカッコよかったから。
中村:為替ディーラーが!
澤本:昔の為替ディーラーって、「いくらで買います」みたいなメモを書いて、隣の席にパーンって投げるの。それに、「今、2億円が動いた」というナレーションがついて。これカッコいいぞと。経済学部目指したけど、数学が圧倒的にできないという問題があり断念したりとかね。……すみません、僕の話よりも、土井さんのお話を!
土井:澤本さんと僕、やっぱり話がとても近いなと思いました。僕も15歳のときに、自分が将来どうなりたいとか、何にも考えていませんでしたよ。ただ、僕は地方の出身なんですけど、一回とにかく東京に行きたいなって。家から離れてひとりで暮らすことだけは、すごく憧れがありました。
東京に行けば何かあるし、それこそ演劇とか好きなものには地方ではなかなか触れられないじゃないですか。だから、そういうものに触れられるというモチベーションだけで受験勉強を乗り切って……。大学に入ってからも、やりたいことのために一生懸命勉強して、就職の準備をするとかは一切なく。全然分かんなかったんですよ、自分がどうしたいのかが。
ただ、何か決めないといけない局面では、これはしたくないっていうことと、これは自分にとって違うんじゃないかってことはしないとだけは決めていました。選ばないといけないときは消去法で選んで来ました。結果として最後に残ったものが、「あっ、自分は結局こういうのがやりたかったんだな」って気が付くのが多くて。「やりたいことは何なのか」「夢は?」って言われると、すごい重荷だったんですよね。むしろ、選ぶべきときは消去法でもいいんじゃないって思います。
中村:面白い。15歳の高1で、何かやりたいことがビシッとある人はそれは素晴らしいけど、全然なかったら「逆にやりたくないことを消していってごらん」みたいなアプローチもあるかもしれないですね。WEB野郎中村も地方出身で、とにかく東京には逃げたいなと思っていたので。とりあえずここは行ってみたいというような、分からないながらも何か短期的な目標をつくれたらいいかもしれないですね。
土井:苦しいですよね。「夢を持たないと」ていうこと自体が。
中村:そう、苦しい。
土井:あんまり思い過ぎると。
澤本:まだ15歳だもんね、だって。
中村:全然大丈夫だよっていう気はしますけどね。
澤本:うん。全然大丈夫。
土井:本当に今思い返すと、ぼんやり生きていましたよ。
澤本&中村:(笑)。
土井:ぼんやりしていた。教室の窓から当時空港が見えていて、飛行機が離発着していくのをただ眺めていたっていうのが、高校時代の記憶で一番覚えているんですよ。
澤本&中村:(笑)。
土井:ぼんやり生きていたっていうね。
中村:素敵な光景ですけど、この大ヒットメーカー土井監督ですら、15歳の頃はぼんやり離着陸を眺めていたということで。レナさん、大丈夫です。
〈後半に続く〉