良質な広告プロダクトとは?という問いに答え続ける
Ogoshiさんはスマートニュースにおける広告の役割について、「ニュースを届けるエコシステムを経済的に支えること」だと言う。
「スマートニュースにおける広告の役割やミッションは、わかりやすいと思います。我々のエコシステムは、ニュースメディア企業から記事を預かって、ニュースを読みたい人に読んでもらう。そこに、広告を出したいクライアントから広告を預かって、広告も見てもらう。そこから良質な記事コンテンツを提供いただいている媒体社様に掲載料をお支払いするというものです。コンテンツって無料ではない。たとえば新聞社は、何千人の社員の皆さんが、コストをかけて良質な記事をつくっている会社ですよね。その良質な情報を直接購読している読者の方以外にも広く届けるお手伝いをする。そのエコシステムを経済的に支えているのがスマートニュースの広告です」(Ogoshiさん)。
それはつまり、「商品と人との結びつきの精度を上げられる世界」につながっていくと同時に「良質な情報とは何か」を問うことにもつながる。
「私たちのミッションは“世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける”ことですが、広告プロダクトにおいてもそれを手伝っている面もあると思います。商品はいいんだけど、その情報が届いてない時に、それを広告が手伝う。必要としている人に商品情報を届けることができれば、それは良質な情報であると言えますよね。僕としては、もっと商品と人の結びつきの精度を上げられる世界をつくれたらいいなと思うんです。そうすれば、気づきや発見も増える。たとえば、隣の家で猫がいなくなりました、探しています、という情報がスマートニュースの広告で届けば、自分ちのベランダに猫がきた時に気づくかもしれない。たとえば、300メートル先にある蕎麦屋の情報が届けば、いいランチの思い出ができるかもしれない。そんなハイパーローカルアドがあったら面白いと思う。15人にしか表示されないけど、CTRが70%あったらめちゃくちゃすごいですよね(笑)。“良質な情報”とは、必要とする人と必要とされる情報の、マッチングの精度である、と言うこともできます。そのためにも、たくさんのユーザーと広告在庫が大事。たくさんのユーザーを理解すればするほど、マッチするための広告在庫があればあるほど、マッチング精度が上がっていくからです。マッチング精度が上がれば、相対的に良い広告体験がつくれるはずです」(Ogoshiさん)。
そして広告プロダクトとは「エンジニアリングの塊」でもあると、彼は続ける。
「日本国内にある程度の規模もあって、かつ自社で広告プラットフォームを持っている企業はあまり多くないのですが、スマートニュースはそのうちのひとつです。プロダクト開発も国内でやっているとなるとさらに数は絞られます。広告プロダクトは、機械学習をはじめとするエンジニアリングの塊なんです。世界から集まった、多国籍・多様性のあるチームメンバーと一緒に広告プロダクトをつくれるスマートニュースで、“広告として良質とは?”という問いに答えていく毎日は、本当に面白い。この広告プラットフォームをもっともっと大きくして行きたいですね」(Ogoshiさん)・
私は博報堂という広告会社から、スマートニュースというニュースアプリの会社に転職したけれど、広告とニュースが相互に支え合うエコシステムをつくっているという意味では、ここって広告会社なんじゃないの?と思ったりして、まだ慣れない自分を奮い立たせている。ただ逆に、博報堂で様々なクライアントのマーケティングを支えた時には生活者視点を持っていたのに、クライアント側に来ると自社視点が強くなってしまい、いかんいかん、生活者視点にならなければ、と思ったりする毎日でもある。
僕たちテックベンチャーは自社のビジネスに誇りを持って日々頑張っているし、既存ユーザーの動きは分かる。だからこそ、広告会社には、私たちから見えない生活者の気持ちに気づかせてほしいし、未来のユーザーが誰かを教えてほしい。そう、私たちのプロダクトをまだ使っていない、生活者の姿を教えてほしいのである。思わぬ生活者の気持ちを切り出し、広告や商品やサービスやビジネスの意外なアイデアを提案してほしい。僕たちテックベンチャーには、広告会社が必要だ。