【前回コラム】「ルールを知らぬまま戦って敗北したコンペの話」はこちら
皆さんは、競合コンペにどうやって勝ちますか?
何の戦略もないままに、アイデア出しや企画書の作成を進めてしまってはいないでしょうか。これから勝負を挑もうとしているのに、勝つための戦略を持たないまま試合に臨もうとはしていないでしょうか。
野球で言えば、相手チームの先発ピッチャーが右投げなのか左投げなのかで、自チームの打線オーダーを組み替えたりしますよね。他のスポーツでも、相手チームの戦術やスタイル、様々な試合展開などを想定しながらゲームプランを組み立てます。ホームゲームか、アウェイゲームかでも戦い方は変わるでしょう。
コンペにおいてもそれは同じ。競合他社がどんな勝負をしてくるのかを想定しながら、自分たちはどういう戦いを挑んでいくのか、そして何をもってして勝つのか(つまり何をもってして選んでもらうのか)のゲームプランが必要です。
そのためにはまず、前回も書いたように、クライアントにヒアリングをして前提条件をきちんと掴んでいるかどうかが大事です。
前回は「流通向けの説明ビデオ制作」のコンペを事例に挙げました。あのコンペで採用になった会社は、単純に見積もりが最も安いところでした。価格競争になることを想定し、企画の中身をミニマムに抑えて、見積もり額が最低価格となる戦略に出たのでしょう。
では、自治体などの公的機関でよくあるように、事前に個別ヒアリングができない場合は、どのように戦略を立てるべきでしょうか。
アイデアを高く評価してもらうためにも戦略が必要
もし自分たちのチームがどの競合他社よりもクライアントと関係が深く、他社が知らないところまでクライアントのインサイトを掴んでいる状況であるなら、その情報を最大限に活かすのはひとつの戦略ではあります。
しかし、他社と同程度にしかクライアント事情を把握していないのであれば、ただクライアントの要望に合わせた企画を出すだけでは、他社に差をつけることは容易ではありません。
私は長く広告制作畑にいましたが、クリエイターは自分たちのアイデアで勝負して勝ちたいと考えます。しかし、たとえ全力でも、アイデアだけでは勝ち切れないことが当然あります。自分たちのアイデアをより高く評価してもらうためにも、戦略性が求められるのです。
例えば野球のピッチャーは、試合で一球一球魂を込めて投げるわけですが、やみくもにストライクを投げ込むのは危険。相手バッターの特徴を考えて、コースや球種を投げ分けてこそ、自分の決め球が効果的に活きるのだと思います。