「アイデアで勝つ!」 その気持ちだけでは勝てない
ここで、ある自治体での集客イベントのコンペの話をしましょう。イベントの企画内容や実施体制、見積もりなどを提案するもので、募集要項には審査時の採点表も公開されていました。そのまま記載するわけにもいきませんので、説明しやすいように変更していますが、採点表の中身はだいたい以下のような感じです。
採点表を見渡すと、「イベント内容の企画性・期待感」が一番大きな配点になっており、最も重視すべきであると思われます。また①~④の項目を足すと半分を超える55点の配点となっており、広告会社のスタッフとしては、クリエイティビティが問われるこれらの部分が最も自分たちの力の出しどころ、という気持ちで頑張るわけです。
しかし、いざ企画内容をまとめていくと、設定された予算額ではできることが限られ、インパクトのある企画や思い切ったメディア活用なども抑えなければならない現実にぶつかりました。
それでも知恵を絞り、見栄えのする企画に仕上げて提出したのですが、結果は敗北でした。1位の採用社とは少し点差の開いた2位か3位だったかと思います。
採点表にもある通り、①~④の部分に様々なアイデアを出し、魅力的な企画に仕上げていくことは大切なことです。しかし、それはどの参加会社も力を入れてくる基本中の基本と言えるでしょう。
自治体などの競合コンペでは、公平性を保つために事前の個別ヒアリングなどはなかなか対応してもらえません。ゆえに、前述したクライアントインサイトで他社に差をつけることが難しくなります。
また、アイデア部分で競い合いたくても、限られた予算額の中では仕様書に書かれた基本部分を消化するだけで費用がなくなってしまい、企画の中身で差をつけることも容易ではありません。
実際にこのイベントが催されたときに現場を視察しましたが、我々の提案とどこで点差が開いたのか、イベント内容からは推し量ることができませんでした。