「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、本書の装丁を手がけたグラフィックデザイナー 寄藤文平さんが『ステートメント宣言。』を紹介します。
僕の20代のおわり、博報堂のオフィスではじめて岡本さんにお会いした。大きなフロアの遠く向こうの机の奥に、革ジャンを着て口髭をたくわえつつ眉間にシワを寄せた、まさに「憮然」を絵に描いたような人物が見えた。あの人とこれからやってゆくのか。そう思うと少し不安になった。ところが、近づいた僕が挨拶をすると、憮然とした顔の下から、おどろくほどやさしい、というか率直にかわいらしい笑顔が現れた。まさに「破顔」を絵に描いたようだと思った。
「ステートメント」という言葉の硬さ、「宣言」という言葉の強さから、もしかしたらこの本は気難しく見えるかもしれない。しかし、任意のページを数行も読んでいただければ、言葉とそれを囲む人々の機微が、鋭くなりすぎないように慎重に選ばれた言葉によって朗らかに描かれていることが理解いただけると思う。まさに「岡本さん」を絵に描いたような本だ、と僕は言いたい。
寄藤文平(よりふじ・ぶんぺい)
グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナー
1973年、長野県出身。2000年に有限会社文平銀座を設立。広告のアートディレクションとブックデザインを中心に、ロゴデザイン、アニメーション制作、執筆活動なども幅広く行う。著書に『ウンココロ』(実業之日本社)、『死にカタログ』(大和書房)、『デザインの仕事』(講談社)『元素生活』(化学同人)『yPad10』(朝日新聞出版)『数字のモノサシ』(大和書房)など。