【前回コラム】「関係性をつむぐパワーワード「ねえ Google」」はこちら
サービス開発から伴走
前回のコラムのスマートスピーカーに続き、会話のキャッチボールという意味ではチャットボットもUXライティングが深く介在する仕事領域です。少し昔ですが身近な例では、マイクロソフトがOffice97のExcelに「オフィスアシスタント」として搭載されていました。あのイルカのことです。そして、2011年に発売されたiPhone 4sに搭載された「Siri」もチャットボットです。最近ではコールセンターやECサイトなどでも使われるようになりました。今後もスマホアプリやWebサービスでの導入拡大が見込まれるチャットボットの領域でUXライティングがもたらす影響について考察していきます。
ペアーズエンゲージというアプリがあります。マッチングアプリのペアーズを運営するからエウレカから生まれたサービスで、いわゆる「婚活アプリ」ではなく、「結婚コンシェルジュアプリ」と謳っています。その理由はコンシェルジュに相談できるチャットサポート体制を整えているところにあります。私はこのサービスにおける会話のキャッチボールを想定した展開フローや「チャットボットの人格設計」などの部分でお手伝いさせていただきました。
会話のキャッチボールのプランニングに関しては第3回のコラムにあるGoogle Homeの「ねえ Google」といウェイクワードのように、どのような言葉の投げかけや展開であればコミュニケーションを誘発できるかを考える、というと業務のイメージがわかりやすいかと思います。しかし、「人格設計」はちょっと想像しづらいかもしれません。
架空の物語で例えると、のび太が困ったときにアイテムを提案してくれるドラえもん、まる子の悩みに対して真剣に相談に乗るたまちゃん、身を挺して銃弾からジョン・コナーを守るターミネーター2のT-800(アーノルド・シュワルツェネッガーさん)のように、主人公に対してサポートの仕方や人格のあり方がそれぞれの作品で構築されています。ユーザー(主人公)をサポートする存在として、チャットボットがどのような人格として捉えられるのがサービスとして最適か、というところからコミットさせていただきました。
人格を表現する上では、実際に存在する人間の方が良いか、動物か、キャラクターか、視覚的に表現するためにアイコンを作った方が最適なのかというような議論がありました。そして、言葉のやりとりの中で「こういう言葉は遣う」・「こんな言葉は遣わない」ということも決めていきました。
ユーザーに頼りにされたいと思いつつも、おせっかいな存在として一度認識されてしまうとサービスから遠のいてしまう原因につながってしまうかもしれません。サービスとしてどのようにふるまうべきかをチューニングしていく過程では何度も議論を重ねていきました。