広報の危機対応に焦点
大学全入時代の到来久しく、これからは企業のみならず大学も広報・ブランディングが求められる。そんな大学を舞台に展開される本作は、テレビ局のアナウンサーから大学の広報パーソンに転身した主人公が、赴任早々、数々の不祥事対応に追われる、という物語だ。
そんな本作の主人公・神崎真を演じる松坂桃李さん。SNSが発達し、不用意なことを言えばすぐに炎上してしまう昨今。炎上回避のため、元アナウンサーにもかかわらず踏み込んだことを言わない“事なかれ主義”なキャラクターを演じている。
「穏やかに、静かに立ち回っていきたい、という考えを多かれ少なかれ人は持っていると思います。そんな真が事なかれ主義ではいられなくなる環境に放り込まれたとき、どういう化学反応が起こるかが本作の見どころですね」。
広報のイメージが変わった
大学の広報パーソンという、ドラマ作品ではあまり取り上げられてこなかった領域。松坂さんも役を通じ、広報へのイメージが変わったという。
「商品・サービスをPRする『組織の顔』というイメージでしたが、まさか危機管理能力も問われるとは、と驚きました」と話す。「上層部と現場、双方の板挟みにあいつつ、そのバランスをどうとって施策に落とし込んでいくか。難しい仕事だと思います。しかも、『こういう落とし所でいかがでしょう?』と上層部に提案しても、いとも簡単にNOと突き返される。あらゆる仕事の中でもトップ3に入るくらい、大変な仕事なのではないかなと感じました」。
俳優業と好感度について
本作、タイトルにもある通り「好感度」がひとつのキーワード。主人公の真もアナウンサー時代、好感度だけで世の中を渡り歩いてきた、という設定だ。俳優業をこなす上でも欠かせない要素だが、松坂さん自身はどう捉えているのか。
「昨今、SNSの発達などにより様々な情報が得られるようになりました。例えばテレビ番組も(好感度や評判を重視するあまり)視聴者のコメントで内容が左右されることがあります。
しかし、ネットのコメントは一意見であり、作品の本質とは異なることも。それを度外視して、作風までも変えてしまうのは僕としては避けたいなと思いますね。監督やプロデューサーらの作品に懸ける想いをぶらさずにつくっていきたいです」。
重なる「広報」と「役者」
役を演じて、広報と自身の仕事に重なりがあることも分かった、と松坂さん。「僕は、自分が関わった作品に関しては、この作品はテレビの力を、あの作品はラジオの力を借りて発信しよう、などと事務所に提案することがあります。しかし、却下されることも。
ただ、(却下されたら)代案を出す、という考えがあるので、『じゃあ、この作品はこういう風にしていきませんか』と再度提案し、できるポイントを探っていきます」。こうした、案を却下されても粘り強く提案し続ける点が、真を演じ、広報と重なる、と感じたという。
俳優業に就く人は、広報のセンスも問われているのか。「様々なメディアに出演して、作品について知ってもらう活動自体を楽しいと感じているということもあります」。例えば番宣はいかにネタバレさせずに視聴者に興味を持ってもらうか、その塩梅が難しいが、「その方法を考えるとワクワクしますね。仕掛け人みたいな。その点は、“片脚”まではいかずとも、“くるぶし”くらいは広報に通ずると思います(笑)」。
一方で、両者の違いについても言及。「人間、やはり言葉にできない感情ってありますよね。例えば、『楽しい』という感情ひとつとっても、様々なニュアンスがある。それを、演技を通じて、いかに視聴者に伝えられるか。言葉ではうまく伝えられない感情を表現するところが俳優業の醍醐味だと思います」。言葉を日々扱う広報担当者の、“言葉にならない感情”を引き出したい、そう語った。