【前回コラム】「エントリー「フォーム」にあらわれる企業「姿勢」」はこちら
UXライティングはバズワード?
マーケティング業界のトレンドは常に激しく変化していて、いつも新しい概念や言葉が生み出されています。最近の例では、DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI(人工知能)、D2C(Direct to Consumer)などなど、これからも新しい言葉が生まれていくのでしょう。
【AIスタートアップ】と銘打っておきながら、「それはAIじゃないでしょ」と感じることも中にはあります。ある意味では「言ったもの勝ち」のような側面もあり、マーケティング業界はバズワードでできているといっても過言ではではないでしょう。すみません、それは言い過ぎでした。
そして、定義があいまいで、あまりにも広いニュアンスを含んでいるものもあります。たとえば、「ブランディング」。もともと、放牧している仔牛に焼き印を押すことで自分の牛と他人の牛を区別することが発祥とされていますが、◯◯ブランディングという言葉が生まれたり、コピーライティングやデザインを担当したことをブランディングと称したり、人によってブランディングの指している意味が違ったりしている現状があります。ある有名なアートディレクターが書籍の帯に「ブランディングという言葉を連呼するアートディレクターは信用してはいけない」と書いてありましたが、まさにこの言葉通りだと思います。
iPhoneが生んだUX
私がはじめて手にしたスマホはiPhone4sで、それから機種変更を重ねてもいつもiPhoneを使い続けています。それがきっかけでMacBook AirやiPadを使うようになりました。そんな私から観ても、スペック的にはAndroidの方が優っている部分はいくつもあると感じています。それでもiPhoneを選び続ける理由はiPhoneのUXに集約されるでしょう。そして、世の中に「UXデザイナー」が増えるきっかけとなったのもAppleの影響だと思います。
2008年6月10日に500本のアプリケーションと共にApp Storeが登場し、アプリ開発に伴うUXにおけるデザインを担うUXデザイナーが生まれたと言われています。スマホアプリが生まれる前も「インターフェイスデザイナー」のように体験を設計する業務は存在していたと思いますが、「UXデザイン」という文脈が浸透していったのはやはりアプリの存在と言えるでしょう。
実装するエンジニア・プログラマー、そして画面の遷移や構成などを担当するUXデザイナーが揃えばアプリをつくることはできます。そのサービスにおける言葉遣いの部分には、なかなか時間的にも金銭的にもコストが回りにくいかもしれせん。しかし、スタートアップのサービスこそ今までに存在するサービスの延長というよりも新しい体験を提供することが多いため、言葉が「残念な表現」になってしまう例をいくつも観てきました。サービスは素晴らしい。ニーズもある。しかし、ユーザーとマッチングされていない、もったいない状態が生まれてしまっている。このような現状を解決できるのはUXライティングだと信じています。