オフラインもUXライティング
過去5回のコラムではWebサービスやスマホアプリなど、オンラインで触れる事例を紹介してきましたが、UXライティングの範疇はオンラインだけにとどまるわけではありません。2020年3月に警察庁は『「歩行者横断禁止」を示す道路標識について、小さな子どもが読めるように「わたるな」と平仮名でも表記できるよう、標識に関する命令を改正することを決めた』との発表がありました。
大人であれば注意力が働くので、横断して大丈夫な道かそうでないかをその瞬間に判断できるかもしれませんが、小さな子供というのは注意散漫で、道路が危険であるという認識が薄いものです。道路標識がパッと目に入った瞬間に「この道は渡ってはいけない」とすぐにわかるのは漢字よりもひらがなであることに異論はないと思います。
また、2020年の8月に文具メーカーのコクヨが「性別欄のない履歴書」を販売するというニュースが大きく報じられました。一般的な履歴書は記入日の日付、氏名の記入欄から始まって生年月日のあとに性別が男性か女性のどちらかをチェックしなければなりません。男女以外の性別も存在していますし、「記入したくない」という意思を選択するというものが今まではありませんでした。
現在、アメリカでは「差別禁止法」によって、履歴書で性別、生年月日、婚姻状況や家族構成、顔写真などを求めることは違法とされています。確かに企業側の論理としては性別によって組織のつくりかたや面接のフローを変えていたのかもしれませんが、もはやそういった風潮が時代にそぐわないことに気付くべきなのかもしれません。
世界No.1のベストセラーである聖書にもこう書かれています。「はじめにことばありき」。世界のあらゆるものはすべて言葉によって成り立っているという解釈です。コピーライターのような専門職でなくても私たちは言葉を操り、言葉に触れることで社会生活を送っています。このコラムを読んだことでUXの観点から言葉遣いを意識するようになったり、仕事だけではなく普段の暮らしの言葉遣いにもポジティブな変化が起きたら嬉しいです。UXライティングを一過性のものではなく、世界をなめらかにするきっかけづくりにしましょう。
ここまで読んでしまったら、あなたも当事者です。ぜひごいっしょしましょう。最後までお付き合いいただきありがとうございました。