『ドラゴンボール』のおかげで友達もできた!
澤本:日本のアニメでは何を見ていたんですか。
ペッペ:めちゃめちゃいっぱい見ていたんですよ。最初は『釣りキチ三平』。
中村:『ドラゴンボール』とかじゃないんだ。
ペッペ:『ドラゴンボール』はもちろん。そのあとに見てました。そのあと『週刊少年ジャンプ』(集英社)のブームがやって来て、『ドラゴンボール』とか『NARUTO』『ONE PIECE』。あとは『北斗の拳』。
中村:『北斗の拳』見てたんだ!いいね!
権八:向こうではイタリア語で放送しているの?
ペッペ:そう!ボイスオーバーで放送してる。『ドラゴンボール』はすごいブームだったね。『ドラゴンボール』は僕よく覚えているんですよ。学校でいっぱい友達できた。
なぜかというと、学校のお昼休憩の間、家に帰れる人は帰ってご飯を食べて、帰れない人は学校の食堂で食べてた。僕は両親2人ともレストランやっていたから、家に帰って『ドラゴンボール』見ながら食事していたんですよ。食堂の生徒たちは『ドラゴンボール』見れないから、学校に戻るとみんなに「ペッペ!ドラゴンボールどうなったの?教えて!」って言われて教えてあげて。それで友達ができた。それほど人気がすごかったんですよ。
中村:子どものころ、かめはめ波の練習した?
ペッペ:もちろん!でもイタリア語だと違うね。かめはめ波じゃなかったんですよ。今言うとダサいんだけど「Onda energetica(オンダ・エネルジェティカ)!」だった。
中村:そうなんだ!すごい。
権八:でもわかりますね、エネルギーみたいなことが。
ペッペ:「エネルギーいっぱいのウェーブ」みたいな意味がある。でもかめはめ波の方が面白いね。あと『シティーハンター』も大好きだった。
中村:『シティーハンター』!!
ペッペ:僕が5歳か6歳ぐらいのときに、冴羽獠みたいな赤いTシャツとデニムジャケット着て、手でピストルの形つくって、道歩きながら「バンバン」ってやってた。あとは『らんま1/2』。ちょっとエッチなシーンもあるじゃない。そこから男性に成長した気がするんですよ。
中村:それ日本人と全く一緒だよ!
ペッペ:だよね!
中村:そうそう。『ジャンプ』見てたら急にエッチな描写が出てきて「これ読んでいいのかな?!」みたいな、ドキドキしながら読んでたよね。
権八:それが遠く離れたイタリアの片田舎の街でも、日本のアニメを見て育った人がいるんだね。それはペッペさんだけじゃなくて、みんなそうだったの?
ペッペ:みんなみんな。
権八:へー!今一番大好きな、リスペクトしてる漫画家さんはいますか?
ペッペ:いっぱいいるんだけど、スタイルが近くて「こういう人みたいになりたい」という人は、松本大洋先生。
澤本・権八・中村:おおー!
ペッペ:そのレベルになりたいね。みんな「おおー!」って言ったじゃない?僕も作品いっぱい出して、「ペッペ」って言うと「おおー!」って思わせたい。そのエネルギーを持って一生懸命頑張っています。
権八:なるほど。松本大洋さんが大好きなんだ。
ペッペ:素晴らしいですね。だからこそ会いたくない。すごく尊敬している漫画家さんは会いたくないんですよ。
権八:なんでなんで?
ペッペ:だって、好きな人や好きなアーティストに会うと、絶対「違うな」って思っちゃうじゃない。僕の頭の中では神様みたいなイメージになってるけど、会うと「こんなこと言う人なんだ」って思うかも。
中村:どうなんだろね。松本大洋先生って僕あまりリアルで知らないけど。
権八:僕ね、実はお会いしたことあるんですよ。澤本さんもあるんじゃない?すごく素敵な方でした。大昔の話ですけど、実は『ナンバーファイブ』っていう漫画を映画化する話があって、その「脚本書いて」って言われて書いたんですよ。でも、途中でいろんな事情により結局頓挫して映画はつくらなかったんですけどね。松本大洋先生の作品だと、何が特に好きですか?
ペッペ:『ピンポン』ですね。本当にすごい。言葉にできない。これは『ONE PIECE』の最初の10巻でも感じたことだけど、インクの線だけで何か感じる。それが松本先生は何回も、どこのページを見てもありましたね。それが不思議。
権八:本当にすごい漫画って線だけで感じるもんね。表現力がすごいよね。