*本記事は『別冊 販促コンペ 公式・企画ガイドブック』(宣伝会議)からの転載です。
*本稿は「第13回販促コンペ」の開催に際し、掲載した記事です。
【回答者】
博報堂
第3クリエイティブ局 チーフアクティベーションディレクター
大久保 重伸(おおくぼ・しげのぶ)氏
「ショッパーズエンターテインメント」をキーワードに、IT系・エンタメ系・キャラクター系から顧客視点の企画・実施まで統合マーケティングをプロデュース。2015年「ちゃんりおメーカー」開発。Yahoo! JAPANインターネットクリエイティブアワードGP。「JPM The Planner 2019」受賞。
Q 購入者/消費者の「インサイト」がわかりません。
A 日常における「なぜ?」を突き詰めてみて。
その人自身すら認識していない潜在意識をインサイトと言いますが、そのインサイトを知る方法として私が勧めているのは、日常における「なぜ?」を突き詰めることです。たとえばスーパーマーケットの来店客を観察して、「なぜこの商品を買ったのだろう」「なぜそれを買う前にほかのコーナーに立ち寄ったのだろう」と考えてみる。自分が買い物をする際も「自分はなぜこれが好きなのだろう」と、理由の理由まで深く探ってみる。それをくり返すうちにインサイトにたどり着けるようになります。
第10回販促コンペでグランプリを受賞した、「ブラックサンダーエクスチェンジ」はその一例。これは「帰国前の旅行客は外貨の小銭が余って困っている」というインサイトがあっての企画。空港に募金箱がある理由を考えてみると、このインサイトが導き出せそうですよね。
Q クライアント視点/顧客視点で企画を見るには?
A 大切なことは3つあります。
ひとつめは、自分の企画を自分以外の人にフラットな視点で見てもらうことです。さまざまな角度から企画を見ると、思わぬメリットやメリットに隠れたデメリットに気付けます。できるだけ多くの人に見てもらってください。
次に、忘れがちなところでは、クライアントが大切にしている思いをないがしろにしないこと。販促企画にしても、手段を問わず売れれば何でもいいというわけではありません。自分がクライアントだったら、その企画を提案されてうれしいのか、愛を感じるのかをいま一度考えてみましょう。
そして最後に、企画のための情報収集をインターネットで完結させないこと。Web上の評価だけでなく、リアルな情報にふれることが、顧客視点の企画を生み出すことにつながるからです。
Q 企画にリアリティを持たせるにはどうすればいいですか。
A 本当に思い通りにいくのか、推考を重ねることが大切。
自分が考えた企画が世の中に出たとき、本当に思い通りにいくのか、しっかりと推考を重ねることが大切だと思います。たとえば〈バズありき〉の企画だとしても、「そもそもそれは本当にバズるのか」「ほかの人でも拡散したいと思うか」など。
チラシ1枚にしても、「本当にこのチラシを見て人が動くのか」「他人だったらどうするか」。理想や空想だけで企画を立ててしまうと、いざ実施時につまずきます。まずは自分でシミュレーションして、障害になりそうな要素を取り除いていってください。
課題をクリアにしたあとは、どんどん企画書を第三者に見てもらってください。きっとまた思いどおりにいかないところが見つかり、そのたびに頭を悩ますことでしょう。ですが、こういったことのくり返しでアイデアが研ぎ澄まされ、リアリティのある企画へと育っていくのです。
Q 「ブランドらしさ」のある企画にするにはどうすればいいですか。
A ブランドメッセージを“因数分解”してみる。
競合が多数いる中で、そのブランドらしい企画を生むのは簡単ではありません。しかし実は、ちょっとしたポイントがあります。自分たちのブランドを大切にしている企業は、その誇りを“言葉”にしていることが多いんです。CMの最後に出てくるキャッチフレーズが代表例で、その言葉は、世間に企業イメージを印象付けたり、社会に対してブランドの使命を表明するために作られています。
そこで私たちプランナーがすべきことは、その言葉を“因数分解”することです。言葉が持つ意図や言葉が生まれた背景を読み解いて、ブランドが発信するメッセージをしっかりと理解する。そのうえで企画の方向性やビジュアルを設計していく。すると、メッセージを受け取る人たちが、「あのブランドらしい」と感じる企画になります。
Q いつもどこかで見たような企画になってしまいます。
A アイデアを生み出すには、2つの要素をかけ合わせるという手があります。
そのかけ合わせを見つけるために、私は街を歩くことも多いです。たとえば、新しいカフェの企画を考えるとしたら、「カフェ」というワードを頭に思い浮かべながら街中を歩いてみる。そして目に飛び込んできたものを、すべてカフェと組み合わせるんです。ワゴンセール×カフェ=ワゴンカフェ、セルフうどん×カフェ=セルフカフェ、ハイブリッドカー×カフェ=ハイブリッドカフェ…。「あっ、これはおもしろそう」と感じたらしめたものです。
大体どんないい企画も、すでにあるもの同士の組み合わせ。デスクに座って「ウ~ン」と悩むのではなく、とにかく街に出て、目についたものをアイデアのタネにしてみてはどうですか。考えるより、見つけるほうが近道だったりします。
Q 実現可能性を高めるにはどうすればいいですか。
A 作れるものは作ってみる、確かめられることは確かめておく。
まずは、世の中で成立しているモノやサービスを分析してみましょう。これらは、アイデアと実現可能性が両立できている良い例です。こういった事例から「なぜ実現できたのか?」を学び、ヒットの要素を抽出して自分の企画に応用してみてください。
こうして企画を立てたら、次は企画書づくりにもひと工夫です。企画で意識してほしいのは、何でも実際にやってみること。パッケージやノベルティを実際に自作してみたり、考えた企画が実施できそうか売り場を見たり、ちょっと問い合わせてみたり。クライアントが企画内容をイメージしやすいよう、リアリティのある要素はなるべく多く取り揃えることが大切です。
作れるものは作ってみる、確かめられることは確かめておくことで、実現可能性の高い企画になっていきます。
Q 企画書にまとめるのに時間がかかりすぎてしまいます。
A まずは〈究極の1枚〉を作ってください。
企画書を書き始める前に、まずは企画の趣旨やメリットがひと目でわかるような〈究極の1枚〉を作ってください。審査される際に、「この1枚さえ覚えていてもらえればいい!」と胸を張って言える1枚を作りましょう。そこからその1枚を軸にして、アイデアにつながるインサイトを前半に、補完するアイデアやリアリティを後半に入れていきます。
こうして企画書全体を〈究極の1枚〉に関係する要素に絞ることで、要点がブレずに伝わる企画書になります。調べたことや伝えたいことがたくさんあると、載せるべき情報や、まとめ方がわからなくなってしまいますよね。そんなときこそ、この方法を試してみてください。情報の取捨選択がしやすくなり、インサイトとアイデアの構造がシンプルに伝わる企画書にまとまります。
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