最後もコンペに敗北した話。ただし、いい負け方について

本当に良いと思えることを提案したなら、負けても仕方ない

正直なところ本当は、私はあまり競合コンペが好きではありません。指名でお仕事を受注できるのが何よりもありがたいです。とは言うものの、広告会社が業績を上げるには、競合コンペに勝って業務を獲得することが必要なのです。

ここまでのコラムで、私はずっと勝ち負けにこだわる話をしてきました。負ける理由はどこにあったのか。そして勝つためにはどうすべきであったのか、と。しかし本来、勝つことは目的ではありません。クライアントの課題を解決することが一番の目的です。

クライアントは自分たちの課題を解決する方法を知るために、複数の広告会社を呼び、様々なアイデアを募り、競わせるわけです。つまり、クライアントが「これなら課題が解決できそうだ」と思えば、そのアイデアを提示した広告会社が勝ちを収めることができるのです。クライアントの判断が正しいのかどうかは分かりません。ただ、選ばれたアイデアだけが、実際に結果を世に問うてみることができます。

先程のメーカーの事例では、我々の新聞広告の提案は受け入れてもらえませんでした。それがクライアントの判断でした。採用にならなかったことは残念ではありますが、自分たちが本当に良いと思ったことを提案したのですから、それでいいのです!もちろん、これは、ここまで私が書いてきた「負ける法則」にハマっていないことが最低条件です。

【負ける法則にハマらないための心得まとめ】
①クライアントが開催する競合コンペのルールをきっちり把握していること。
②どうやってコンペに勝つのか(何をもって選ばれるのか)戦略を持っていること。
③自分たち(広告会社)にだけ都合のいい提案になっていないこと。
④自分たちの強みが陳腐化しないようバージョンアップしていること。
⑤過去の成功体験に固執し、過去の風景を見せるような提案になっていないこと(つまり未来を見せること)。
⑥勝てるチームになって提案に臨んでいること。

上記のことを乗り越えた上でなら、自分たちが本当に良いと信じるものを思い切って提案すればいいのです。それで負けたのであれば、仕方ありません。

先程の事例には、後日談があります。当時の提案そのものは花咲くことはありませんでしたが、後になって実を結ぶことがありました。

ボディコピーを完璧に仕上げて提案した新聞広告は、実はクライアント内では高く評価されていて、違う商材に関しての新聞広告制作を受注することとなったのです。「新聞読者にしっかりと語りかける広告をつくってほしい」とオファーをいただきました。

次ページ 「本質を置き去りにすることが、一番の「負ける法則」」へ続く

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生駒達也( コピーライター/プランナー)
生駒達也( コピーライター/プランナー)

広告代理店にてコピーライターを経てクリエイティブディレクターに。これまでメーカー、インフラ、通販、自治体など様々なクライアントを担当。日経広告賞、ACC賞、毎日広告デザイン賞、TCC新人賞、ニューヨークフェスティバルなど広告賞各種受賞。近年は、従来からの広告クリエイティブにとどまらず、企業のコミュニケーション活動全般に携わる。今春フリーランスとなり、“あなたを応援する仲間でありたい”をコンセプトに「オーエンカンパニー」を立ち上げ。

生駒達也( コピーライター/プランナー)

広告代理店にてコピーライターを経てクリエイティブディレクターに。これまでメーカー、インフラ、通販、自治体など様々なクライアントを担当。日経広告賞、ACC賞、毎日広告デザイン賞、TCC新人賞、ニューヨークフェスティバルなど広告賞各種受賞。近年は、従来からの広告クリエイティブにとどまらず、企業のコミュニケーション活動全般に携わる。今春フリーランスとなり、“あなたを応援する仲間でありたい”をコンセプトに「オーエンカンパニー」を立ち上げ。

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