本質を置き去りにすることが、一番の「負ける法則」
企画をまとめる時に我々はしばしば「当てに行く」という表現をします。野球で打者がフルスイングせずに「バットをボールに当てに行く」というところから来た言葉だと思いますが、クライアントへの提案の際に、いかにもクライアントがイメージしていそうな企画に合わせていったり、絶対ハズれないストライクど真ん中の企画を出すようなことを言います。
通常、そういう企画は誰もが考えられそうな案で、新規性や面白みがなく、広告として効果やインパクトがあるのかどうかも疑わしいものになります。それが本当に良いと思っていなくても、失敗することを恐れて、冒険せずに当てに行くわけです。
しかし、それで確実にコンペに勝てるというわけではありません。特にクライアントとの関係性で一番手のパートナー代理店になっていないのであれば、勝てる可能性は低いでしょう。あまりお勧めはできません。当てに行ったのに、当たらない(負ける)のはカッコ悪いですね。どうせなら、自分らしく思い切りフルスイングして負けるほうが気持ちいいのではないでしょうか。もし当たれば、めっちゃ飛びそうですし。
勝つためには、アイデアの他にルールや戦略など理屈っぽいことも色々と考えないといけませんが、最後は自分が本当に正しいと思うことをぶつけてチャレンジして、成功や失敗を繰り返しながら、自分なりの「法則」を見つけるしかないと思います。当てに行くことだけを繰り返していては、ホームランは打てないでしょうし、自分なりの「打法」も見出せないのではないでしょうか。
大事なことは、結果のいかんに関わらず、そのコンペから何かを学び取ろうとする姿勢だと思います。転んでも、ただでは起きないこと。負けてしまっても、自分たちの提案がなぜ選ばれなかったのか理由を洗い出し、それを言語化しておく。そしてそれを共有する。同じような失敗を繰り返さないように。そして、次により良い提案をするために。
フルスイングの提案をして負けた時には、「失敗」だと思う必要はありません。最後は、クライアントが決めることです。ただし、クライアントの課題解決につながる提案ができていたのかどうかの検証をきちんとしておかなくてはいけません。
私たちは、ついついコンペで「広告」のアイデアを競い合っているように勘違いしてしまいます。しかし、決して忘れてはならないことがあります。私たちが競い合っているのは、クライアントの「課題を解決する」アイデアなのです。その本質を置き去りにしてしまうことが、一番の「負ける法則」なのではないでしょうか。
負けに不思議の負けはありません。