11種のモチーフの集合体からなるロゴ
全国農業協同組合連合会岩手県本部(JA全農いわて)は4月、1989年に定めた「純情産地いわて」のブランドロゴのリニューアルを発表した。野菜や果物、肉牛などを表す11種のモチーフの集合体からなるロゴは、北欧を思わせるデザインと色合い。凸版印刷がリブランディングのプロジェクト全体を、ライトパブリシティがロゴのデザインを手がけている。
2019年にJA全農いわてではブランドの定義から見直そうと、各部門の若手を中心とした10名が集まり全8回のワークショップを開催。生産者と消費者を結ぶJAが、どのような価値を提供できるかを言語化していった。
凸版印刷の武田愛久氏は「ブランドのあり方を議論し、ブランドプロミスを策定。最終的に『まえむきに ひたむきに』というスローガンに集約していきました」と説明する。同社の渡辺研氏によると「消費者はもちろんのこと、生産者の方々にJA全農いわてのファンになってもらうことも重要なミッション」であり、求心力を高めるロゴが必要と考えライトパブリシティに相談を持ちかけた。
リアス式海岸は東北のフィヨルド
ライトパブリシティではJAとの仕事は初のこと。北欧をモチーフとしたロゴのデザインは岩手の独自性や個性を考える中で、北欧との共通項を見出したことに由来する。
「岩手の名所といえばリアス式海岸。つまり東北のフィヨルドだなと。しかもアンデルセンというストーリーメーカーがいる北欧に対し、岩手には宮沢賢治がいる。彼は岩手をイーハトーブ(理想郷)だと言っていて、理想郷から広大な自然の美味しさが届くという岩手独自の魅力を感じてもらえる、なおかつ視覚的に作物の美味しさを阻害しないようなデザインであることが重要だと考えました」(ライトパブリシティ クリエイティブディレクター 宮寺信之氏)。
一方で、岩手にはバラエティ豊かな農畜産物があるものの、突出した品目がないという課題があった。ロゴに11種のモチーフを盛り込んだのは、“たくさんの恵みがある大地の豊かさ”を感じ取ってもらうのが狙いだ。
「北欧のデザインは対象物をよく観察してディテールを取り出したり、あえてシンプルにしたり。強さの中にも温もりやリズム感がある。そういう要素を取り入れようと、幾何図形でシンプルに表現しています。原色ではない赤みのある紫、黄みがかった緑、濃い茶色という3つのキーカラーによって、岩手の冷涼な空気感や大地の豊かさを感じていただけたら」(ライトパブリシティ アートディレクター 木村好見氏)。
段ボール、手ぬぐいなどのツールも制作
11種のモチーフは岩手県が生産高で全国10位以内に入る品目。このロゴにはない、ぶどう、さくらんぼなどのモチーフも既に制作し、JA全農いわてのカタログギフトに掲載している。「さらにトラック、段ボール、のぼり、手ぬぐい、ネックストラップなども一貫したデザインで提案いただいています。5月からは県内でテレビCMも流れています」とJA全農いわて 管理部総合企画課 星菜々氏。
「今後もロゴから派生して、自由にモチーフを増やしていけるのがこのデザインの面白いところ」と木村さん。新たなロゴを起点にJA全農いわてが日常に寄り添う存在となり、県の農業全体が盛り上がる世界をチーム一同でつくっていけたらと考えている。
スタッフリスト
- 企画制作
- 凸版印刷+ライトパブリシティ
- CD
- 宮寺信之
- AD
- 木村好見
- D
- 柴田美月
- Pr
- 渡辺研、武田愛久