世界で活躍する日本人マーケターの仕事(P&G Singapore office 倉富二達広さん)前篇

【前回コラム】「世界で活躍する日本人マーケターの仕事(花王上海産品服務有限公司 野原聡さん)」はこちら

海外に出て活躍する日本人マーケターにオンラインでインタビューを実施する本コラム。インタビューを通じてコロナ禍の今、さらにAfterコロナの時代に、ブランドはどう行動していくべきか、そのヒントを探っていきます。2回目の“訪問”先は、シンガポール。P&Gで「アリエール」、さらには日本市場におけるジェルボール型洗剤の中長期戦略を統括されている倉富二さんに話を聞きます。特にシンガポールで勤務しながら日本のマーケットに向き合っている仕事内容から、日本におけるマーケティングを今後どう進めるべきか、グローバルの視点からヒントをいただきます。

倉富二達広氏
P&G Japan Ariel Brand Director 兼 Japan SUD(Gel Ball)Leader

2012年に武蔵野美術大学の油絵学科卒業。同年、P&Gマーケティング部に入社。日本本社にてSK-IIなどのマーケティングを担当後、2016年からアジア本社のシンガポールに赴任。現在はアリエールブランドディレクターと、日本市場におけるジェルボール型洗剤の中長期ビジネス戦略リーダーを兼任。

 

新しいブランド、そして新しいロケーションを求めてシンガポールに。

― 倉富二さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

私は、2012年にP&Gに入社して現在10年目です。新卒でP&Gに入社し、マーケティングに携わってきました。

実は高校も油絵学科、その後武蔵野美術大学でも油絵を専攻していた私は、将来は画家になるつもりでいて、P&Gも最初はデザイナー枠で受けようとしていました。

― 画家を目指していた倉富二さんが、なぜマーケターになったのですか。

大学でデザインの授業も受けていて、そこで広告やマーケティングのエッセンスも学んでいました。ずっと油絵を描いていた私にとって授業で学ぶデザインの概念が新しく、デザイナー採用をしている企業の面接は受けていました。P&Gもデザイナー枠で受けようとしたのですが、その年はデザイナーの採用がなく、他の仕事内容を見たらマーケティング職に広告開発やパッケージ開発と書いてあったので、デザイナーに近いのかも?と思って採用試験を受けました。選考が進む過程で、マーケティングは上流からブランドをつくる仕事だということがわかりました。難しい仕事だけど、とても興味を持ち入社を決めました。

― 入社してからはどのような経験を積んできたのですか。

入社して5年間は、神戸の本社で主に「SK-Ⅱ」の担当として小売店様と一緒にマーケティングをする、いわゆるコ・マーケティングを担当。百貨店様などと協業して、POSデータを使いながらどうビジネスポテンシャルを伸ばしていくかを考えていました。

当時は特にインバウンド需要をどう掴むかが重要で、いわゆるビッグデータを駆使しながらマーケティングとセールスの間のような立場で、小売店様ごとの顧客の細分化したニーズを特定し、ターゲティングしたマーケティングを進めていました。

日本で主に「SK-Ⅱ」を5年担当した後、シンガポールに移り洗濯用洗剤ブランドに関わることになりました。新しい経験をし、学びを得ることが自分にとって一番のモチベーションの源泉なので、日本で「SK-Ⅱ」を経験した次は全然違うブランドと全然違うロケーションの希望を上司に伝えていました。

― 他の国への異動は普通にあるのですか?

P&Gでは社員の国を跨いだロケーションの異動は普通にあります。例えば「僕、ドイツに行きたいです」と突然言っても難しいですが…、自分がどんなスキルを身につけたいのか、どんなキャリアを達成したいのかを明確にして会社に伝え、それが理解されれば、上司たちが便宜を図って動いてくれます。当然、異動したい側のニーズと受け入れる側のニーズが噛み合った時に異動が叶うのですが、「こういうキャリアインタレストを持っているタレントである」ということが組織全体に伝わっていくシステムもあります。

次ページ 「5年以上先を見て、中長期のビジョンを描く」へ続く

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玉井博久
玉井博久

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。著書に『宣伝担当者バイブル』(宣伝会議)、『「売り方」のオンラインシフト』(翔泳社)。2015年より5年連続シリコンバレーに、2018年より3年連続CESに、深圳、イスラエル、また米中のテックジャイアント本社に足を運び最新のデジタルテクノロジーを視察。得られた知見をマーケティング、Eコマース、コンテンツプロデュースに活用。シンガポールにてASEANのECビジネスを2年で10倍以上拡大させる。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。ポッキーは2020年に世界売上No.1*として、ギネス世界記録™認定。


*タイトル:最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド/2019年 年間世界売上高 推計$589,900,000 (国際市場調査データによる)

* 国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる

玉井博久

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。著書に『宣伝担当者バイブル』(宣伝会議)、『「売り方」のオンラインシフト』(翔泳社)。2015年より5年連続シリコンバレーに、2018年より3年連続CESに、深圳、イスラエル、また米中のテックジャイアント本社に足を運び最新のデジタルテクノロジーを視察。得られた知見をマーケティング、Eコマース、コンテンツプロデュースに活用。シンガポールにてASEANのECビジネスを2年で10倍以上拡大させる。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。ポッキーは2020年に世界売上No.1*として、ギネス世界記録™認定。


*タイトル:最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド/2019年 年間世界売上高 推計$589,900,000 (国際市場調査データによる)

* 国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる

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