コロナにかかわらず「消費者のために」が全ての軸
— シンガポールのコロナ下の生活環境はどのような状況ですか。
シンガポールでコロナによる混乱がスタートしたのは、日本で初めて緊急事態宣言が出た時とほぼ同じ時期です。レストランの営業時間短縮、オフィス出社抑制、外出時のマスク着用などのルールが出来できたのが最初です。当初オフィスで働いている人達は取り締まりにより感染者は少ないけれど、建設業のために周辺国から来ている人達が多く感染していました。そのため規制を厳しくしたことで感染は落ち着きました。その時の規制のいくつかは今も続いていて、例えばレストランに入る時は入り口にあるQRコードをスマホでスキャンして、私はここに来て入ります、という風に自分のID情報を登録しないといけません。
コロナが発生した当初、仕事に関して言うと、どこの企業の人も同じだと思いますが、CM撮影ができなかったり、需要予測がつかなかったり、小売店の営業時間の変化に対応したり、まとめ買いによる売り切れに対処したりと、色々なことが一気に起こりました。
とはいえ業務は完璧とは言えませんが、進めることができています。例えばコロナ前までは1、2カ月に1回くらいは日本に行って、消費者リサーチをしていましたが、渡航できませんのでリモートでやるようになりました。ただリモートの消費者調査は思ったほどハードルは高くなく、消費者の人と話すことにそれほど違和感はなく、実際にとれるラーニングの精度も高いと感じました。さらにプラスの面もあり、消費者の方も小さい赤ちゃんがいる方や日中働いている方はこれまで調査で出会えませんでしたが、リモートならこういう方から話を聞くことができるようになりました。赤ちゃんを抱っこしながら、もしくは仕事の合間にリサーチに参加してもらえ、今まで出来なかったことが出来るようになりました。
こうした調査を経て把握した消費者の変化はやはり衛生意識です。除菌や抗菌といった機能訴求をしている商品はよく売れていました。また洗濯においては、ちょっと外出して帰ってきてすぐに洗濯するという行動が生まれました。コロナによって家事の仕方、洗濯の仕方は変わったと感じています。こうした衛生意識に対する兆候はコロナが終息しても、先に紹介した家事シェア的な現象も含めて長期的に続いていくと考えています。こうした点を踏まえて今後の商品・コミュニケーション開発に取り組んでいきたいと思います。
最後に昨今、話題に上るDXについて言うと、コロナによって促進されたこともありますが、元々ありとあらゆる面でデジタル化は取り組みが行われています。消費者のためが全ての軸になるので、消費者がよりお買い求めしやすいように、より消費者の声を拾いやすいようにという観点でデジタル化を進めています。消費者の商品の購買の仕方、情報接触(メディア)のあり方、そして先の消費者リサーチのあり方もその一つだと言えます。